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明治開化 安吾捕物 その五 万引家族(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

大金持ちの母娘はなぜ盗む

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1951年(昭和26年)2月 「小説新潮」

文字数
23,970字
読了目安
約48分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第五話で、1951年(昭和26年)2月の「小説新潮」に掲載された。牛肉屋の娘から大富豪浅虫家の若奥様となった咲子は、気品高い姑と美しい義姉に万引の癖があること、そして先代の死の陰に恐ろしい「血」の秘密が隠されていることを知る。屋敷に入りびたる医師と、月末ごとに現れる元下男――秘密を握る二人が崖から落ちて死んだとき、新十郎は事件のさらに奥にある五年前の出来事をたどりはじめる。家族の秘密を守ろうとする者たちの悲劇を描く一編で、作中には当時の病への偏見がそのまま語られている。

あらすじ

恋愛結婚で白金の大富豪浅虫家に嫁いだ牛肉屋の娘咲子は、気品ある姑スギ子未亡人と義姉キク子が万引の常習者で、盗んだ品を誰も入れない大土蔵にしまい込んでいることを知る。さらに義弟の一也から、先代権六は癩病を苦にして狂い、自ら顔の皮まで剥いで腹を切ったのだと聞かされる。長男博司は直後に外国へ去ったまま戻らない。秘密を知る医師花田と元下男野草通作は、家をゆすっていたらしい。キク子が花田の息子と婚約してまもなく、写真に凝る一也が庭で二人を撮影したあと、花田と野草は崖の上で争い、石もろとも転落して死ぬ。石の崩れ方を怪しんだ警察に頼まれ、新十郎は五年前の使用人を訪ね歩く。当時キク子が身ごもっていたこと、行方の知れない植木屋甚吉のこと、そして母娘の万引が先代の死のあとに始まったことがわかる。勝海舟は博司の父殺しを隠すための作り話と見立てるが、新十郎は未亡人に土蔵へ案内してほしいと切り出す。先代はキク子を辱めた甚吉を手討ちにし、顔の皮を剥いだ甚吉の死体を自分の身代わりに葬って、自らは五年間土蔵に隠れ住んでいたのである。万引は人を土蔵へ近づけない口実だった。新十郎は秘密に目をつぶって屋敷を去るが、崖の石に細工をして二人を殺した一也は捕らえられる。母の苦心を知らず、家を守ろうとしたつもりの悲しい犯行であった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 スギ子未亡人はシンは心のあたたかい人のようでもある。嫁入道具というものを一切持たない咲子の着物のことに気を使ってくれて、季節々々の着物を自分で見たてて作ってくれる。顔に親切を見せないし、優しい言葉をかけてくれることも殆どないだけ、シンの親切が身にしみるのだが、しかしとりつく島もない。威厳があって、キリリと見るからに利巧らしくて、うちとけることも、甘えることもできないのである。

「明治開化 安吾捕物 その五 万引家族」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 こういわれて、ホッと崩れるような安堵の思い。恐懼おくあたわざる虎之介であった。

「明治開化 安吾捕物 その五 万引家族」坂口安吾(青空文庫)

原文を読む

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