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明治開化 安吾捕物 その十三 幻の塔(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

床下の密室と大陸の怪人

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1951年(昭和26年)12月 「小説新潮」

文字数
15,140字
読了目安
約30分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第十三話で、1951年(昭和26年)12月の「小説新潮」に掲載された。芝の破れ寺で偽の古仏を彫らされている箕作りのベク助は、背中の刺青に人殺しで牢破りの前身を隠している。その秘密を握る生臭坊主の息子に頼まれ、彼は耳の聞こえない大工になりすまして、田村町の謎の武芸者島田幾之進の屋敷に、ひそかに抜け道をこしらえることになる。元は大陸の馬賊とも海賊とも噂される一門、清国の権力と通じる怪人物、偽の聾者や盲人――大陸の影がちらつく人物たちの化かし合いを、悪党ベク助の目から描く冒険色の強い一編。

あらすじ

芝の七宝寺で偽の古仏を彫るベク助の正体は、熊に顔をかじられて人相の変わった、人殺しで牢破りの大工新八だった。住職三休の倅五忘はベク助の背中のガマと自雷也の刺青を見抜いており、耳の聞こえない者しか雇わない島田道場の普請に、聾唖の大工に化けて入り、床下から抜け道をつけてくれと頼む。道場主の島田幾之進は大陸の馬賊の頭目とも噂される偉丈夫で、杖術の達人の娘サチコと、小人ながら諸芸に神技を持つ息子三次郎を抱えていた。普請は三次郎と、実業家平戸久作の娘葉子の新居である。ベク助は盲人のはずの按摩お吉の後をつけ、清国の権力者に通じる山本定信の屋敷で、自分の正体が下男の金三に見破られていることを知る。それでもベク助は新居を仕上げ、台所の床下の物置に動く石壁を仕込んで寺を去った。婚礼の翌朝、その物置で三休と五忘が刺し殺されているのが見つかる。四方を塗り固めた密室に、新十郎も首をひねるが、勝海舟から動く壁の話を聞いて仕掛けに気づく。新十郎は関係者を集め、島田が金三の耳元で短銃を撃つと、金三は飛び上がった。聾唖を装って山本の手先となり、忍び込んだ二人を待ち伏せて殺したのは金三であった。島田は、坊主たちが狙った金の延べ棒が道場の土間の敷石にすべて化けていると明かし、一門はまもなく大陸へ姿を消した。

登場人物

冒頭部(原文より)

「なア、ベク助。貴公、小野の小町の弟に当る朝臣だなア。人に肌を見せたことがないそうだなア。ハッハッハア」  五忘にこう云われて、ベク助は苦い顔をした。イヤなことを云う奴だ。この寺へ奉公して足かけ四年になるが、五忘の奴がこう云いはじめたのは今年の夏からのことである。そのときは、

「明治開化 安吾捕物 その十三 幻の塔」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 島田一門がいつのまにか東京から全員姿を消したのは、それからまもないことだった。  それをきいて、海舟は呟いた。 「まぼろしの塔か。きいた風なことを云う馬賊だが、見どころのある奴だ。日本人も捨てたものではないらしいやな」

「明治開化 安吾捕物 その十三 幻の塔」坂口安吾(青空文庫)

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