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明治開化 安吾捕物 その十四 ロッテナム美人術(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

三人の女は一人だと言う侯爵

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1952年(昭和27年)1月 「小説新潮」

文字数
42,950字
読了目安
約1時間26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第十四話で、1952年(昭和27年)1月の「小説新潮」に掲載された。南国の大藩の血を引く侯爵大伴宗久は、書斎にこもる学者肌の当主。美しく社交的なシノブ夫人を迎えてまもなく、彼は「三人の女が実は一人の人間だ」と口走り、刀を振り回すようになる。嫁いだばかりの妹克子と、名利に無欲な造船技師の夫通太郎は、兄を救おうと新十郎を頼る。一か月足らずで評判を落として姿を消した外国人の美容術「ロッテナム美人術」と、高価な香水が謎の糸口となる。シリーズ中最も長い一編で、勝海舟の役割も他の話とは趣を異にする。

あらすじ

横浜のカンカン虫一助は、縮れ毛の大男を求める貼り紙に応じて西洋人の店を訪ねたまま帰らなかった。一方、侯爵大伴宗久の妹克子は、嫁いで十七日目に兄が発作で倒れたと知らされる。宗久は叔父晴高や重臣の久世喜善、夫人の父須和康人を偽者だと疑い、刀を手に追い回していた。克子にだけ心を許した兄は、妻シノブと二人の侍女キミ子・カヨ子は同じ一人の人間だと語り、夫の通太郎には、評判を落として姿を消したロッテナム美人術の広告の文句を口にする。克子は、侍女たちが一瓶二百円のシノブ愛用の香水をつけていることや、美人術の店の黒人の扉番の指が三本しかなかったことを思い出す。だが翌日、貴族や精神医学の権威が居並ぶ鑑定の場で、宗久は入れ替わりに現れる三人の女をみな妻と同じ人間だと答え、最後に三人が並んで立つ姿を見て卒倒し、精神病院へ送られてしまう。まもなく、三本指の黒人に見えた男が、肌を黒く染めた日本人の射殺死体で隅田川に上がった。夫妻の依頼を受けた新十郎は、外交官の友人や美人術の店の家主から、シノブが店の二階を借りて大きな木の寝台を持ち込んでいたことを聞き出す。美人術そのものが、底の仕掛けで三人の女が入れ替わる奇術を宗久に見せ、狂人に仕立てるための大芝居だったのである。しかし、海舟の言うとおり、身分ある者の企みに道理は勝てず、新十郎は宗久を救い出せなかった。三日後、宗久の死が伝えられた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 一助はお加久に叩き起されてシブシブ目をさました。めっぽう寒い日だ。昨夕から風がでて波も高くなっていたから、天気はよいが、今日は仕事にアブレそうな予感がした。一助は横浜の波止場で荷役に働く俗に云うカンカン虫であった。 「今日はアブレそうだなア。行くだけムダかも知れねえや」  目をさまして顔を洗う習慣のない一助、シブシブ起きてグチの一ツも言いながら二三度手足を動かすうちに仕事着に着終っている簡易生活。あとは貧しい食膳の前へ坐る以外に手がない。お腹の大きいお加久が彼の坐るのを待って、

「明治開化 安吾捕物 その十四 ロッテナム美人術」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 こう呟くと彼はすでにふりむいて歩いていた。彼の一生に、この時ほど悲しい時はある筈がないのだ。  しかし、それから三日後には大伴宗久の死が報ぜられた。三日間はやまったと彼は唇をかんだが、しかし、いくらか救われたような軽い気持をとりもどすこともできたようだった。

「明治開化 安吾捕物 その十四 ロッテナム美人術」坂口安吾(青空文庫)

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