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明治開化 安吾捕物 その十五 赤罠(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

生きた葬式の火に消えた旦那

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1952年(昭和27年)3月 「小説新潮」

文字数
33,372字
読了目安
約1時間7分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 千葉県
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第十五話で、1952年(昭和27年)3月の「小説新潮」に掲載された。深川木場の大旦那山キの不破喜兵衛は、孫二人を毒茸で失った厄払いに、還暦の誕生日に「生きた葬式」を出すことを思い立つ。頭を丸めて自ら棺に入り、荼毘所に火をかけたところで赤い頭巾にちゃんちゃんこ姿で生まれ変わって現れる――はずの趣向だった。木場の旦那衆の粋と、鳶の頭が率いる火消し人足の心意気が描かれる、江戸前の気風に満ちた一編。花廼屋と虎之介が事件の現場に居合わせる。

あらすじ

深川木場の大旦那、山キの不破喜兵衛は、病身の跡取り清作の二人の子を、何者かが混ぜた秋田の毒茸で亡くしていた。喜兵衛には若いころ鳶の娘に生ませた隠し子がいたという噂もある。厄払いに還暦の日、市川の別荘で生きながら葬式を出すことにした喜兵衛は、頭を丸めて自ら棺に入り、鳶の頭コマ五郎の配下に担がれて荼毘所へ運ばれる。コマ五郎が扉に錠をおろして火がかけられたが、喜兵衛はいつまでも出てこない。老師が飛び込もうとするのをコマ五郎は押しとどめ、荼毘所は焼け落ちて、棺の跡から焼死体が見つかった。コマ五郎は捕らえられ、さらに大番頭の重二郎が葬式の前日から姿を消していたことがわかる。現場にいた花廼屋と虎之介から話を聞いた新十郎は、清作の妻チヨの兄三原保太郎の手足の包帯に目をとめる。調べを進めると、重二郎が店の金を大きくごまかし、豪奢な妾宅を構えていたことも明るみに出た。新十郎は木場の旦那ヤマ甚の庭に同じ荼毘所を建てさせ、自ら棺に入って再現してみせる。喜兵衛は棺を運び込んだ火消し人足の装束に着替えて抜け出しており、荼毘所の中には前夜から、殺された重二郎の死体とともに保太郎が、開いた扉の陰に潜んでいたのである。毒茸で山キを乗っ取ろうとした重二郎を討ち、妹夫婦を守るための企みであった。保太郎は火傷を負いながら、扉が破られた騒ぎにまぎれて抜け出していた。新十郎は秘密を胸にしまい、コマ五郎は無罪放免となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 年が改って一月の十三日。松飾りも取払われて、街には正月気分が見られなくなったが、ここ市川の田舎道を着かざった人々の群が三々五々つづいて通る。一見して東京も下町のそれと分る風俗。芸者風の粋な女姿も少からずまじっている。  深川は木場の旦那の数ある中でも音にきこえた大旦那山キの市川別荘へ葬式に参列する人々であったが、それにしては喪服姿が目につかなくて、女姿は遊山のようになまめかしいばかりである。それも道理。お葬式とは云え、死んだフリをして生きかえるという趣向のものだ。  山キの当主、不破喜兵衛は当年六十一。一月十三日というこの日が誕生日で、還暦祝いを葬式でやろうというのである。

「明治開化 安吾捕物 その十五 赤罠」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 輩下一同の技をこらした仕掛と、新十郎のとりなしなどもあって、コマ五郎は無罪放免になったということである。また喜兵衛によく似た老人が秋田山中に隠棲してヘップリコを食うこともなく大正末期に至るまで長生きしたという話を私は風の便りにきいた。

「明治開化 安吾捕物 その十五 赤罠」坂口安吾(青空文庫)

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