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明治開化 安吾捕物 その十八 踊る時計(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

オルゴールが呼ぶ死者の部屋

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1952年(昭和27年)6月 「小説新潮」

文字数
26,713字
読了目安
約53分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第十八話で、1952年(昭和27年)6月の「小説新潮」に掲載された。洋行帰りの古美術収集家時信全作は、病に倒れてから三年、古墳から掘り出された名品を並べた陳列室に寝台を運び込み、鍵をかけて閉じこもっている。用があるときはオルゴールを鳴らして人を呼ぶ。ある月曜の朝、彼は無口な織物の行商人を迎え入れ、銀行から大金を引き出させた。その日に限って何もかもが普段と違い、夜になって、全作は背中を刺されて見つかる。古墳の出土品をめぐる因縁と、西洋渡来の仕掛け時計が絡む、密室ものの一編。

あらすじ

古美術の収集家時信全作は、結核性の関節炎で歩けなくなり、自慢の品を並べた二階の陳列室に寝台を置いて鍵をかけ、夜は看護婦の木口成子、昼は弟の大伍に世話をさせていた。用があればオルゴールを鳴らし、女中のナミ子が控えの間で待つ。妻サナエも娘の妙子も、ケチで冷酷な全作を嫌っていた。ある月曜の朝、全作は織物の行商人伊助を密かに招き入れ、大伍に銀行から五万円を引き出させる。その朝、霊能者に入れ込む姉のオトメが押しかけ、今日弟が殺されると告げて祈っていった。十一時にオルゴールが鳴ったが、控えの間の鍵が消えていてナミ子は入れない。様子を見に入った大伍は、兄は熟睡していると言い、付け髭を拾って出てきた。夜になって全作は背中を刺された姿で見つかる。友人の銀行家川田は、伊助の正体は群馬の古墳から出た百カラットのダイヤを抱く黄金の仏像を盗んだ男一色又六で、全作はその仏像を五万円で買ったのだと語る。部屋から仏像は消えていた。オトメは犯人は女だと言い張り、一色は横浜で捕らえられるが、新十郎はオルゴールの中に残った墨の跡にこだわる。新十郎は密室の中で、置時計の踊り子人形に糸を結び、時報とともにオルゴールの蓋が開く仕掛けを再現してみせた。十一時の合図はすでに死んでいた全作が鳴らしたのではなく、鍵を隠してナミ子を締め出し、仕掛けを外しに入ったのは大伍であった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 妙子は自分の生れた時信家を軽蔑していた。父の全作がそもそも虫が好かない。父だから仕方なしにつきあっているようなものだが、顔を見るのもイヤなのだ。  母が生きていれば家庭に親しみが持てたのかしらと考えてみることもあるが、どうも母のないせいではなさそうだ。彼女の母はあんまり父が冷酷でワガママなので、神経衰弱になり、一日に一皮ずつ痩せたあげく、ハヤリ目とカッケにかかって死んだそうだ。  彼女は継母も軽蔑していたが、もしも実母が生きていれば、継母以上にバカで哀れな存在かも知れないと考えていた。

「明治開化 安吾捕物 その十八 踊る時計」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 新十郎はドアをあけて一同を部屋の内部へ案内した。卓上に在った物の位置が変っていた。常には寝台附近の別の小卓上のオルゴールが大きなテーブルの上に移され、置時計の位置が反対側に変っている。  オルゴールのフタの中央についてるカギの孔に糸がむすびつけられている。糸の一端は置時計の踊り子の一人の胴に結びづけられていた。それだけのことだった。

「明治開化 安吾捕物 その十八 踊る時計」坂口安吾(青空文庫)

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