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明治開化 安吾捕物 その十九 乞食男爵(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

破産した若旦那と消えた恋文

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1952年(昭和27年)7月 「小説新潮」

文字数
30,755字
読了目安
約1時間2分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第十九話で、1952年(昭和27年)7月の「小説新潮」に掲載された。物語は、女相撲の大横綱花嵐が、見知らぬ女に頼まれて夜中に大石を動かしたという奇談から始まる。日本橋の呉服問屋の若主人久五郎は、妻の父である貧乏男爵が連れてきた生糸商人の儲け話に乗って破産し、男爵一家に身ぐるみはがされたうえ妻とも離縁させられる。華族の体面の陰の金への執着と、公爵家の若夫人を苦しめる古い恋文の脅迫が絡み合う。今回は花廼屋と虎之介も勝海舟も登場せず、新十郎が独りで謎を解く。

あらすじ

芝の琴平神社の縁日に興行していた女相撲の横綱花嵐が、見知らぬ女に頼まれて、夜中に大石を起こし、別の石を運ぶ。翌朝、庚申塚の石が芝山内の道の真ん中に転がっていた。一方、日本橋の呉服問屋チヂミ屋の若主人久五郎は、妻政子の父である貧乏な小沼男爵が連れてきた生糸商人坂巻多門の儲け話に乗り、外国商人に生糸をだまし取られて破産する。男爵と息子の周信、政子は家中をひっかき回して金目のものを奪い、離縁と慰謝料を承知させたが、引き上げの際に周信は大事な「あれ」がなくなっていることに気づいて血相を変えた。久五郎は妹の小花、女中のハマ子と芝の寮に移り、ハマ子と夫婦のように暮らし始める。小花は兄と口論して家を出て、男爵一家がまた家探しに来ても何も見つからない。ある日、周信が一人で現れ、明朝大工と鳶を連れて屋敷じゅうを壊して探すと宣言したまま行方を絶つ。新十郎は政子に伴われ、羽黒公爵家の若夫人元子に会う。元子は娘時代に周信へ送った百通余りの恋文で脅され、一通ずつ金で買い戻していたが、周信が消えた後も脅迫状は届いていた。屋敷には小花が女中として住み込んでいた。新十郎は脅迫状と家探しの日付を突き合わせ、周信が消えた夜が、花嵐が石を動かした夜だと気づく。新十郎は警官に寮を見張らせ、ハマ子が恋文を受け渡しの使いに渡すところを押さえる。恋文の束を盗んだのは久五郎で、宣言は隠し場所を移させるための罠だったが、二人はそれを見抜いて大石の下に隠したように見せかけ、掘りにきた周信を殺したのであった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 この事件をお話しするには、大きな石がなぜ動いたか、ということから語らなければなりません。  終戦後は諸事解禁で、ストリップ、女相撲は御承知のこと、その他善男善女の立ち入らぬところで何が行われているか、何でもあると思うのが一番手ッとり早くて確実らしいというゴサカンな時世でしたが、明治維新後の十年間ほどもちょうど今と同じように諸事解禁でゴサカンな時世でした。ソレ突ケヤレ突ケなどというのは上の部で、明治五年には房事の見世物小屋まで堂々公開されたという。女の子のイレズミもはやったし、男女混浴という同権思想も肉体の探究もはやり、忙しく文明開化をとりいれて今にもまさる盛時であった。

「明治開化 安吾捕物 その十九 乞食男爵」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 新十郎は暗い顔をそむけた。

「明治開化 安吾捕物 その十九 乞食男爵」坂口安吾(青空文庫)

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