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明治開化 安吾捕物 その二十 トンビ男(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

寒のタケノコとばらばらの手足

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1952年(昭和27年)8月 「小説新潮」

文字数
28,486字
読了目安
約57分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第二十話で、1952年(昭和27年)8月の「小説新潮」に掲載された、連作の最終話。冬の隅田川で、油紙に包まれた人の手足がつぎつぎに見つかる。非番の日に最初の包みを拾った若い楠巡査は、遺体の胃に残っていた寒中のタケノコを手がかりに、休みをもらって独りで聞き込みを始める。名うての高利貸の一族、勘当された長男、亡き妻の命日のタケノコ飯――。行き詰まった新米巡査を、新十郎が導く師弟の物語でもある。作者が執筆当時の事件に触れながら語る、軽妙な語り口も味わいどころ。

あらすじ

二月の隅田川で、非番の楠巡査は油紙に包まれた人の太腿と足首を拾い、二日後にも腕と手のひらの包みを見つける。包みはその後も流れつくが、顔は鼻と耳をそがれ目をくり抜かれていて、身元は分からない。胃からは鶏肉と寒中には珍しいタケノコが出た。十日の休みをもらって料理屋を聞き歩いた楠は、向島の仕出し屋で、寺島の高利貸才川平作が亡妻の命日の一月三十一日に、毎年タケノコ料理で法要を営むことを知る。和尚や元番頭の易者、亡妻の妹お直から話を聞くと、平作は放蕩で十二年前に長男加十を勘当していたが、次男石松が身を持ち崩した今、加十が許されるかもしれないという噂があった。目黒のタケノコ売りに化けて才川家の女中に近づいた楠は、毎年の法要の日に、トンビを着た無口な男が離れで独りタケノコ飯を食べていくと聞き出し、遺体は加十だと結論する。ところが上役の先輩に、一流の料亭ではタケノコは珍しくないと叱られ、すっかり自信をなくしてしまう。夏になり、迷宮入りとなった事件の報告書と楠の日記を読んだ新十郎は、その観察力をほめ、調べ直しを勧める。なぜ細かく切り分けたのに二つずつ包んだのか。新十郎は、見つからない左腕の先こそ加十の特徴で、勘当後に失った腕をごまかすためのばらばらだったと見抜く。横浜で加十の妻に会って確かめ、犯人は跡目を狙った末娘の夫小栗能文と突きとめる。妻京子も進んで手を貸していた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 楠巡査はその日非番であった。浅草奥山の見世物でもひやかしてみようかと思ったが、それもなんとなく心が進まない。言問から渡しに乗って向島へ渡り、ドテをぶらぶら歩いていると、杭にひっかかっている物がある。一応通りすぎたが、なんとなく気にかかって、半町ほど歩いてから戻ってきてそれを拾い上げた。  油紙で包んで白糸で結ばれている。白糸はかなり太くて丈夫な糸だが、タコをあげる糸らしい。相当大ダコに用いる糸であろう。包みをあけると、中から現れたのは人間の太モモと足クビであった。左足の太モモ一ツ、右足の足クビから下のユビまでの部分が一ツである。楠はおどろいて、自分のつとめる警察へそれを持参した。これが二月三日である。

「明治開化 安吾捕物 その二十 トンビ男」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

「女を甘く見てはいけませんよ。女は心がやさしくて、気が弱くて、ケンカが弱くて常に平和を愛するかよわい動物だなんて、大それた逆説の支持者となってはいけません。それを信用してはタンテイはつとまりませんよ」  と新十郎はあとで顔をあからめて楠にささやいた。

「明治開化 安吾捕物 その二十 トンビ男」坂口安吾(青空文庫)

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