アンゴウ(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
古本にはさまれた暗号
- ミステリ
- 心理
- 文字数
- 11,249字
- 読了目安
- 約22分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1948年(昭和23年)、「サロン別冊 特選小説集」に載った坂口安吾の短編。復員した出版部長の矢島が、神田の古本屋で戦死した友人の旧蔵書を見つけ、頁のあいだから数字だけの紙片を発見する。解読すると男女の逢引の文句が現れ、矢島は失明した妻と亡き友人との関係を疑い始める。探偵小説の謎解きに、戦災の悲しみを重ねた作品である。
あらすじ
出征から戻った矢島は、神田の古本屋で戦死した旧友の神尾の蔵書印のある本を買う。頁のなかから魚紋書館の用箋が出てきて、数字を頁・行・字として拾うと「いつもの処にいます七月五日午後三時」という文句になる。筆跡は女の手らしい。矢島の留守宅にも同じ用箋があり、妻のタカ子は空襲で両目を失い、二人の子供を失っていた。神尾は左利きで、タカ子は寝るときいつも左側に寄りそっていた。矢島は妻と友人のあいだに何かあったのではと疑いながら、仙台に疎開した神尾夫人を訪ねるが、同じ本がそこにも一冊あるのを見つけて混乱する。調べてゆくと、焼け跡から持ち出された矢島自身の蔵書が別の人の手に渡っていたことが分かる。その本の間には何枚もの暗号の紙がはさまれており、矢島がすべてを解読すると、書き手は妻ではなく、空襲で亡くなった二人の子供だった。暗号は兄と妹の遊びの手紙で、父は涙を流し、子供たちが天国で遊んでいると信じる。
登場人物
- 矢島 出版部長。復員して妻と暮らす
- タカ子 矢島の妻。空襲で失明した
- 神尾 矢島の親友。戦死した
- 神尾夫人 仙台に疎開している神尾の妻
冒頭部(原文より)
矢島は社用で神田へでるたび、いつもするように、古本屋をのぞいて歩いた。すると、太田亮氏著「日本古代に於ける社会組織の研究」が目についたので、とりあげた。 一度は彼も所蔵したことのある本であるが、出征中戦火でキレイに蔵書を焼き払ってしまった。
「アンゴウ」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
矢島は然し満足であった。子供の遺骨をつきとめることができたよりも、はるかに深くみたされていた。 私たちは、いま、天国に遊んでいます。暗号は、現にそう父に話しかけ、そして父をあべこべに慰めるために訪れてきたのだ、と彼は信じたからであった。
「アンゴウ」坂口安吾(青空文庫)
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