兄たち(太宰治)のあらすじ・登場人物
三人の兄たちの肖像
- 家族
- 心理
- 文字数
- 7,915字
- 読了目安
- 約16分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
父を十四で亡くした「私」が、三人の兄たちについて語る自伝的な一篇。戯曲を書き、全国一の若さで県会議員となった長兄。粋紳士風の趣味を捨てず、最期まで神秘捏造をやめなかった三男。太宰の書いた肉親の描写のなかでも忘れがたい一篇である。
あらすじ
父がなくなったとき、長兄は大学を出たばかりの二十五歳、次兄は二十三歳、三男は二十歳、「私」は十四歳であった。兄たちはみんな優しく大人びていたので、父に死なれても少しも心細く感じなかった。長兄を父と全く同じことに思い、次兄を苦労した伯父さんのように思って甘えてばかりいたが、兄たちのほうは百万以上はあったであろう遺産と亡父の政治上の勢力を守るために、眼に見えぬ努力をしていたにちがいない。長兄は二十五歳で町長、三十一歳で全国一若い県会議員となり、新聞に「A県の近衛公」と書かれて人気があった。……それでも長兄はいつも暗い気持のようだった。書棚にはワイルド全集、イプセン全集、日本の戯曲家の著書がつまっており、自分でも戯曲を書いて、ときどき弟妹を呼び集めて読んで聞かせた。そんな時の長兄の顔はしんから嬉しそうに見えた。物語はやがて、東京で病に倒れた三男の兄の最期へと向かう。「私」は兄の傍に寝て二晩、のどにからまる痰を指で除去した。暗い電気の下で兄は引き出しを開けさせ、手紙やノートを破り棄てさせる。長兄や友だちに囲まれて息を引きとるまえ、「兄さん!」と呼ぶ「私」に、兄ははっきりした言葉で、ダイヤのネクタイピンとプラチナの鎖があるからおまえにあげるよ、と言った。それは嘘だった。
登場人物
- 私 十四歳で父を失った末弟
- 長兄 町長・県会議員となりながら戯曲を書き続けた人
- 三男の兄 粋紳士風の趣味を捨てず若くして病没した兄
冒頭部(原文より)
父がなくなったときは、長兄は大学を出たばかりの二十五歳、次兄は二十三歳、三男は二十歳、私が十四歳でありました。兄たちは、みんな優しく、そうして大人びていましたので、私は、父に死なれても、少しも心細く感じませんでした。
「兄たち」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
兄は、きっと死ぬる際まで、粋紳士風の趣味を捨てず、そんなはいからのこと言って、私をかつごうとしていたのでしょう。無意識に、お得意の神秘捏造をやっていたのでありましょう。ダイヤのネクタイピンなど、無いのを私は知って居りますので、なおのこと、兄の伊達の気持ちが悲しく、わあわあ泣いてしまいました。
「兄たち」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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