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文化祭(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

文化祭で儲ける村の坊っちゃん

  • 風刺
  • 社会

坂口安吾 1954年(昭和29年)6月 「小説新潮」

文字数
13,978字
読了目安
約28分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

1954年、「小説新潮」に載った、坂口安吾の晩年のユーモア小説。大地主の坊っちゃん井田信二は、人から物を借りて返さず、借金とりを言いくるめて撃退するのが何よりの楽しみ。村の青年団の文化祭の幹事を引き受け、東京から学生バンドと美貌の歌手を呼んで、村人たちも歌手も軽やかに翻弄する。ドタバタのなかに、金と文化、都会と農村をめぐる皮肉が利いている。

あらすじ

農村の大旦那の坊っちゃん井田信二は、人の物を横取りし、借りた物を返さず、催促されると弁舌で追い払うのが何より好きな男だった。村の青年団が文化祭の寄附を募りに来ると、信二は寄附より儲けが出ると言い、東京の昭和大学のジャズバンドと美貌の女子大生歌手を呼ぶことを提案して幹事を引き受ける。印刷屋にも出演契約にも金を払わないまま、入場券五千枚を青年団の幹部三十人に売らせ、「売上げは半分は持ってきて下さい」と訓示する。バンドマスターの谷と歌手のヤツ子は、二等車に乗るのどうのでもめながら村に着く。ヤツ子は文化祭のあと、帰りのバスを教えられないまま信二に居残らされるが、暗闇を四つん這いで案内する彼の根気に感心し、二人は酒を飲みかわす。翌朝、青年団幹部が集まって決算が行われ、売れ残り以外の入場券代は大半が幹部のふところに入り、信二は「農村不況」を理由に収支が足りないと言って平然としている。ヤツ子が一万円をねだっても、信二は町へ連れ出して農村の苦しみを見せると称し、バス代を立てかえさせたあげく、駅前で礼を言って村へ戻ってしまう。ヤツ子はまたバス代を立てかえさせられるだけと悟り、あきらめる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 趣味というものは広いものだ。信じられないようなことを好む人がある。  井田信二は農村の静かな風物のなかで何不自由なく育った。彼の周囲の人々はそれぞれアクセク土にまみれて働いているのに、彼だけは戦時中も卵や牛乳にも不自由なくいわば小国の王子のように育ったのである。

「文化祭」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 彼は静々とバスにのった。ヤツ子も再びバスに乗りこんで徹底的に奴めを困らせてやりたいとムラムラと殺気立ったが、待て待て、要するにまたバス代の立てかえをさせられるのが天の定めであろう、とても芋との合戦には勝味がないと悟って、やめにしたのである。

「文化祭」坂口安吾(青空文庫)

原文を読む

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