禁酒の心(太宰治)のあらすじ・登場人物
酒に卑屈になる人々
- 風刺
- 社会
- 文字数
- 3,572字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
1943年(昭和18年)1月、雑誌「現代文学」に発表された掌編。「私は禁酒をしようと思っている」と宣言しつつ、配給酒の瓶に目盛をつけて飲む家庭、ビヤホールの行列、酒場のあるじのご機嫌取りに励む客たちなど、戦時下の酒をめぐる人間模様を誇張と皮肉で描く、随筆風の小品。
あらすじ
冒頭で、酒が人を卑屈にしていると禁酒を宣言し、戦時下の酒事情を風刺する。配給酒の瓶に目盛をつけて一日一目盛ずつ飲み、玄関に錠をおろして隠れて飲む家庭の姿、ビヤホールの前で行列を作る髭の男たち、店のあるじの機嫌を取ろうと鋏で植木を剪る銀行の重役、鯛の塩焼きや豚の煮込みを我先にと注文して懐が持たなくなる客たちを、次々に描き出す。結びで、酒はやはり魔物だと述べる。
冒頭部(原文より)
私は禁酒をしようと思っている。このごろの酒は、ひどく人間を卑屈にするようである。昔は、これに依って所謂浩然之気を養ったものだそうであるが、今は、ただ精神をあさはかにするばかりである。近来私は酒を憎むこと極度である。いやしくも、なすあるところの人物は、今日此際、断じて酒杯を粉砕すべきである。
「禁酒の心」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ぼく、豚の煮込み、いらない。」と全く意気悄沈して、六号活字ほどの小さい声で言って、立ち上り、「いくら?」という。 他のお客は、このあわれなる敗北者の退陣を目送し、ばかな優越感でぞくぞくして来るらしく、 「ああ、きょうは食った。おやじ、もっと何か、おいしいものは無いか。たのむ、もう一皿。」と血迷った事まで口走る。酒を飲みに来たのか、ものを食べに来たのか、わからなくなってしまうらしい。 なんとも酒は、魔物である。
「禁酒の心」太宰治(青空文庫)
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