ニューフェイス(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
下町六人組の大騒ぎ
- 風刺
- 社会
- 文字数
- 12,479字
- 読了目安
- 約25分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1948年(昭和23年)7月、「小説と読物」に発表された坂口安吾のユーモア小説。下町育ちの幼なじみ六人組のうち、元力士の千鳥波五郎がトンカツ屋を、質屋のシンちゃんがシルコ屋を開く。いたずらと仕返しの応酬がテンポのよい会話で進み、新しく出る人を意味する題名どおり、「ニューフェース」を名乗る一人の娘が店に現れて騒ぎが広がってゆく。サルトルやキェルケゴールを持ち出す戦後の風俗をからかう口ぶりも楽しめる軽い読み物。
あらすじ
廃業した前頭の千鳥波五郎がトンカツ屋を開くことになるが、紺屋のサブチャンが染めたのれんには「千鳥足」と書かれていた。下町育ちの幼なじみ六人組の間では、こんないたずらが日常茶飯事である。質屋のシンちゃんは商売替えしてシルコ屋「さゝの枝」を開き、わざと意味不明な気取った開店案内を配って、女性客の好奇心を引きつけて店を繁盛させる。そこへ事務員風の娘が来て、会社を辞めて店で働きたい、声楽家か女優になりたいのだと語る。シンちゃんは、千鳥波の店の常連の三人連れは映画界の大物だとでたらめを吹きこみ、娘を千鳥波の店へ送りこむ。千鳥波は娘に、三人の客への心得を言いふくめておく。ところが当日、娘は客が現れるとソプラノで金切り声を上げ始め、千鳥波は仕掛け人はシンちゃんだと察して娘を奥へ運ぶ。娘は思いがけない一撃で千鳥波をのしてしまうが、三人の客は実は声楽ぎらいの国粋グループで、騒ぎは笑いに終わる。夜道を送る途中、千鳥波は娘の飾らない言葉に心を動かされ、生涯の恋が始まったと悟る。
登場人物
- 千鳥波五郎 前頭ドンジリで廃業し、トンカツ屋を開いた元力士
- シンちゃん 質屋のせがれ。シルコ屋「さゝの枝」を開く
- サブチャン 紺屋。千鳥波ののれんにいたずらをする
- ソプラノ嬢 シンちゃんにそそのかされ、千鳥波の店で働く事務員の娘
冒頭部(原文より)
前頭ドンジリの千鳥波五郎が廃業してトンカツ屋を開店することになったとき、町内の紺屋へ頼んだノレンが届いてみると「腕自慢、江戸前トンカツ、千鳥足」と意気な書体でそめあげてある。
「ニューフェイス」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
千鳥波は、みちたりて、うなった。彼はついに、わが生涯の恋が、こゝにはじまりつゝあることを悟った。 それはそれが果してチャーミングでありしことを傲然とシン公にうそぶく幸福を考えて酔った。然し、思えば、シン公のあの文章も、わが胸の思いに思い当るところがあるような気がした。
「ニューフェイス」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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