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やんぬる哉(太宰治)のあらすじ・登場人物

ナマズの蒲焼と細君談義

  • 風刺
  • 社会

太宰治 1946年(昭和21年)3月 「月刊読売」

文字数
4,608字
読了目安
約9分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 青森県

この作品について

太宰治の掌編。1946年(昭和21年)3月、雑誌「月刊読売」に発表された。戦後、津軽に疎開中の作者が、中学校の同級生と称する医師に招かれ、リンゴ酒とナマズの蒲焼を前に、細君の創意工夫と疎開者論を延々と聞かされる。最後の一行に落ちがある、皮肉の効いた小品。

あらすじ

津軽に疎開して以来、小学校時代の友人はちょいちょい訪ねて来るが、中学校時代の友人とは話しても窮屈だ。町の病院に勤める医師から晩餐に招かれた「私」は、断るつもりで昼すぎにその家を訪ねる。日曜の秋晴れ、二階のヴェランダに通された「私」に、医師は配給のリンゴ酒と、細君が工夫したというナマズの蒲焼を勧め、台所の科学だの創意工夫だのと自慢をはじめる。さらに、隣へ疎開してきた細君と、うちの細君が論戦した顛末まで長々と語る。「私」は、東京の荻窪のヤキトリ屋台が胸の焦げるほど懐かしくなり、微笑して立ち上がり、「いい奥さんを持って仕合せです」とお世辞を言い、往来を荒縄でくくった大きなカボチャを背負って歩いているおかみさんを指して、たいていはあんなひどいものだと言う。ところが、そのおかみさんは医師の家の勝手口にはいっていった。それが、細君の御帰宅であった。

登場人物

冒頭部(原文より)

こちら(津軽)へ来てから、昔の、小学校時代の友人が、ちょいちょい訪ねて来てくれる。私は小学校時代には、同級生たちの間でいささか勢威を逞しゅうしていたところがあったようで、「何せ昔の親分だから」なんて、笑いながら言う町会議員などもある。

「やんぬる哉」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

私にはその時突然、東京の荻窪あたりのヤキトリ屋台が、胸の焼き焦げるほど懐しく思い出され、なんにも要らない、あんな屋台で一串二銭のヤキトリと一杯十銭のウィスケというものを前にして思うさま、世の俗物どもを大声で罵倒したいと渇望した。しかし、それは出来ない。私は微笑して立ち上り、お礼とそれからお世辞を言った。 「いい奥さんを持って仕合せです。」往来を、大きなカボチャを三つ荒縄でくくって背負い、汗だくで歩いているおかみさんがある。私はそれを指さして、「たいていは、あんなひどいものなんですからね。創意も工夫もありやしない。」医師は、妙な顔をして、ええ、と言った。はっと思うまもなく、その女は、医師の家の勝手口にはいった。やんぬる哉。それが、すなわち、細君御帰宅。

「やんぬる哉」太宰治(青空文庫)

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