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中庸(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

中庸に敗れた元大佐の村

  • 風刺
  • 社会

坂口安吾 1953年(昭和28年)6月 「群像」

文字数
16,104字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

終戦後、山里の村の村長に推された元海軍大佐の一人称で語られる、坂口安吾の風刺小説。昭和28年、「群像」に発表された。「無為無能」を自任する村長が、焼けた小学校の再建をめぐる村の対立に巻き込まれ、助役の羽生、村会議員たち、不遇な女教員の小野マリ子と向き合ってゆく。堅苦しい軍人口調の語りの滑稽さと、村の人間関係のしたたかさ、中庸の無力が重なる。

あらすじ

海軍大佐で終戦を迎えた余は、請われるまま山里の村の村長になる。何もしなくてよいという話だったが、小学校は前年の怪火で全焼し、バラックの校舎は床板もなく、建て直しの金策のあてもない。余は同僚の遺族である女教員の小野マリ子と知り合い、その自由な物言いを好もしく思うが、助役の羽生は彼女を堕胎した淫奔な女と罵り、村の人々もマリ子を敵視している。防火用水のために家を立ち退かされた小野一家が学校の宿直室に移ると、村会議員たちは教室に床を張る代わりに職員室と宿直室の床板をはぎ取り、土間にしてしまう。余は手を差し伸べるが、マリ子は土間の藁にもぐって寝ると言って意に介さない。余が村長を辞めると言い出す場面もあるが、羽生がなだめて収める。のちに余は、羽生が床板を取り返そうとしているのを見て、宿直室に自費で床を張ろうとするが、マリ子に激しく拒まれる。逆上して羽生を放火犯と罵った余は、金槌で殴られて倒れる。村では無能な村長が発狂したと噂される。余は自分の墓碑銘を「中庸に敗る」と記すのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

この村からは陸海軍大佐が各一名でた。陸軍の小野は南方で戦歿し、海軍の佐田は終戦後帰村した。余がそれである。

「中庸」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

余の無能、余の発狂、二つながらたぶん正しいのであろう。拙かりし生涯をかえりみれば、有終の美をとどめたものと云うべきであろう。余は余の墓碑銘を次の如くに記しておいた。 「中庸に敗る」

「中庸」坂口安吾(青空文庫)

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