アプリで読む

無料・登録不要

家庭の幸福(太宰治)のあらすじ・登場人物

家庭の幸福は諸悪の本

  • 社会
  • 風刺

太宰治 1948年(昭和23年)8月 「中央公論」

文字数
8,365字
読了目安
約17分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

「家庭の幸福は諸悪の本」の一句で知られる晩年の短編。1948年(昭和23年)8月、雑誌「中央公論」に発表された。病床で聞いたラジオの街頭録音で、民衆の訴えをヘラヘラ笑いでかわす役人の声に憤った「私」が、その役人の平和な家庭を空想し、やがて一篇の短篇小説の筋書きへと組み立てていく。ささやかな家庭の幸福が、どこかで誰かを踏みにじって成り立っているのではないかという問いを突きつける。

あらすじ

病気で寝ながらラジオを聞いていた「私」は、街頭録音の番組で、民衆の怒りを妙な笑い声と空疎な観念語でかわす役人の声にとうとう逆上する。あの笑いは何なのか。鎮静剤を飲んで落ち着いた私は、その役人の暮らしを空想しはじめた。放送の夜、彼はいつもより一時間早く帰宅し、家族全員が受信機の前に集まって、お父さんの声に耳を澄ます。うるわしい家庭の風景である。だが私の空想は一転し、津島修治という町役場の戸籍係を主人公にした短篇小説の筋書きへ変わっていく。ラジオを買った日、退庁時刻の直前に出産届を持って駆け込んできた見すぼらしい女を、津島は優しい声で明日にしなさいと追い返す。その夜、女は玉川上水に身を投げる——。

登場人物

冒頭部(原文より)

「官僚が悪い」という言葉は、所謂「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どんな具合いに悪いのか、どうも、色あざやかには実感せられなかったのである。問題外、関心無し、そんな気持に近かった。つまり、役人は威張る、それだけの事なのではなかろうかとさえ思っていた。

「家庭の幸福」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

だいたいこんな筋書の短篇小説を、私は病中、眠られぬままに案出してみたのであるが、考えてみると、この主人公の津島修治は、何もことさらに役人で無くてもよさそうである。銀行員だって、医者だってよさそうである。けれども、私にこの小説を思いつかせたものは、かの役人のヘラヘラ笑いである。あのヘラヘラ笑いの拠って来る根元は何か。所謂「官僚の悪」の地軸は何か。所謂「官僚的」という気風の風洞は何か。私は、それをたどって行き、家庭のエゴイズム、とでもいうべき陰鬱な観念に突き当り、そうして、とうとう、次のような、おそろしい結論を得たのである。  曰く、家庭の幸福は諸悪の本。

「家庭の幸福」太宰治(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品