遺恨(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
インフレの支那ソバ屋
- 風刺
- 社会
- 文字数
- 10,706字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1948年(昭和23年)5月、「娯楽世界」に載った短編小説。戦後のインフレ下で、わずかな給料にあえぐ大学教師・梅木先生が、念願の中華料理店に入って支那ソバを食べるが、女給にあしらわれて逆上する。そこから、家出した妻と学生たちへの屈折した憎しみが語られる。戦後の貧しさ、世相への皮肉を、喜劇のような筆づかいで描いている。
あらすじ
梅木先生は、インフレの時代に支那ソバを食べに行く決心をする。店には若い女客のような女給が三人いて、先生は声をかけることもできず、おずおずと二杯目を頼み、お釣りのことでさらに恥をかく。先生が店に来るまでには理由があった。六百五十円の月給に比べ、教室の学生たちはヤミ稼ぎで先生の一月分を一日で稼ぎ、先生の妻アキ子はその学生たちにちやほやされて遊び歩き、ついに学生の一人と同棲してしまう。怒って学生を殴った先生は、妻から「あなたはカイ性なしの敗残者」と言われて捨てられる。店を出た先生は高熱を出して寝つき、うわごとで「パンパンをなぐれ」と口走る。心配した学生たちが連れてきた二人の女は、先生の枕元に坐らされる。
登場人物
- 梅木先生 大学の教師。月給は六百五十円
- アキ子 先生の妻。学生たちと遊び歩く
- 学生たち 先生を見舞うが、どこか能天気
冒頭部(原文より)
梅木先生は六十円のオツリをつかんで中華料理店をとび出した。支那ソバを二つ食ったのである。うまかったような気がする。然し、味覚の問題ではない。先生は自殺したくなっていた。インフレ時代に物を食うということが、こんなミジメなものだとは。
「遺恨」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
三人の男は顔を見合せて、ウン、その通りだ、というような、物分りのよい顔付をつくって、見せ合った。もう、帰りたくなった女なのである。そして、彼等は、その顔付によってお互の心を察し、無言にどやどやと立去ってしまったのである。
「遺恨」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。