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無頼は討たず(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

義理に命を賭ける渡世人

  • 歴史

山本周五郎 1936年(昭和11年)3月 「キング」

文字数
11,434字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 山梨県

この作品について

山本周五郎が1936年(昭和11年)、「キング」に発表した股旅もの。春まだ浅い甲州路、笹子峠を舞台に、渡世人・猪之助が、義理と情のために命を賭ける。渡世人の一途な生きざまを、桃の花に重ねて描いた一編である。

あらすじ

浅黄色にくっきりと晴れた空の下、春の遅い甲州路にも三月の日足はあらそえず、堤には虎杖が芽をぬき、丘つづきには桃の朱と麦の青が眼に鮮やかだ。大月の宿を出て笹子峠へと向かう街道の、峠にかかる茶店——そこから、渡世人・猪之助の物語が始まる。義理と情の板ばさみのなかで、猪之助は、ある因縁に決着をつけようとする。半太郎とお信という若い二人の仲を浄めるため、そして庄兵衛にまつわる血の因縁を断つため、彼は自らの身を投げ出す。「庄兵衛どんの血を、おいらの血で洗ったのだ、これで半太郎どんとお信の仲も、さっぱりと浄められるだろう——あとは、冥途で庄兵衛どんに詑びを云うだけよ」。そう言い終えると、猪之助はがっくりと前へのめって絶息する。窓の外では、夜霧のなかに、音もなくほろほろと桃が散っていた——。義理のために命を捨てる渡世人の一途な生きざまを、散りゆく桃花に託して描いた、山本の股旅ものである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 浅黄色にくっきり晴れた空だ。  春の遅い甲州路も三月という日足は争われず、堤には虎杖が逞しく芽をぬき、農家の裏畑、丘つづきには桃の朱と麦の青が眼に鮮やかだ。笹子川の白い河原を低くかすめ飛ぶ鶺鴒の声も長閑である――。

「無頼は討たず」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「有難え。庄兵衛どんの血を、おいらの血で洗ったのだ、これで半太郎どんとお信の仲も、さっぱりと浄められるだろう――あとは、冥途で庄兵衛どんに詑びを云うだけよ」  そう云い終ると、猪之助はがっくり前へのめって絶息した。  窓の外では夜霧のなかに、音もなくほろほろと桃が散っている。

「無頼は討たず」山本周五郎(青空文庫)

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