畜犬談(太宰治)のあらすじ・登場人物
犬を恐れる男の追従笑い
- 風刺
- 文字数
- 12,173字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 山梨県
この作品について
太宰治が1939年(昭和14年)8月、『文学者』に発表したユーモラスな短編。「――伊馬鵜平君に与える――」の副題を持つ。「私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであろうという自信である」という書き出しで知られ、犬を蛇蝎のごとく恐れ憎む「私」が、犬に出会うたびに追従笑いを浮かべて身を守ろうと苦心する。大げさな自己戯画と語りの勢いで読ませる、太宰の軽妙な話芸の一編。
あらすじ
「私」は犬が大の苦手で、いつか必ず噛みつかれるにちがいないと固く信じている。友人が犬に噛まれ、二十一日間も病院に通ったという話を聞いて以来、その憎悪と恐怖は極点に達している。甲府のまちはずれに住みついた「私」は、そこかしこにうようよいる犬に用心し、噛まれまいとして、犬に会うたびに満面の追従笑いを浮かべ、やさしい人間だと見せかけて歩く。ところがその卑屈な作戦が裏目に出て、「私」はかえって犬に好かれてしまう。ある日、真っ黒の見すぼらしい小犬が「私」につきまとい、とうとう家の玄関まで居ついてしまう。憎んでいたはずの犬をポチと名づけ、内心もてあましながらも、「私」はいつしかその犬と奇妙な暮らしを続けていくのだった。
登場人物
- 私 犬を極度に恐れ憎む語り手
- ポチ 私に居ついてしまった、真っ黒の見すぼらしい小犬
- 家内 私の妻
冒頭部(原文より)
私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであろうという自信である。私は、きっと噛まれるにちがいない。自信があるのである。よくぞ、きょうまで喰いつかれもせず無事に過してきたものだと不思議な気さえしているのである。諸君、犬は猛獣である。
「畜犬談」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ポチにやれ、二つあるなら、二つやれ。おまえも我慢しろ。皮膚病なんてのは、すぐなおるよ」 「ええ」家内は、やはり浮かぬ顔をしていた。
「畜犬談」太宰治(青空文庫)
名文
私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであろうという自信である。
犬嫌いを大真面目に論じる随筆風小説の書き出し。「自信」の一語を裏返して使う語り口に、太宰の可笑しみが凝縮されている。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。