第四次元の男(海野十三)のあらすじ・登場人物
とぼけた四次元話
- SF
- 風刺
- 文字数
- 9,156字
- 読了目安
- 約18分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1940年(昭和15年)1月の「ユーモアクラブ」に発表された、海野十三のユーモアSF短編。自分の体が、ときどき他人に見えなくなるという奇妙な体質に気づいた男が、その秘密を探る。読者をからかうような語り口で、四次元の世界という当時の話題を滑稽に描く。
あらすじ
語り手の「わたくし」は、ここ一、二年、自分の体が誰にも見えなくなることに気づく。深夜の戸山ヶ原で、すれ違った男女に突き当たっても、相手は自分の存在に気づかない。この奇妙な体験を、友人や易者の藤田師に打ち明けると、師は彼の人相を「天下の奇相」と驚き、四次元の生物の切断面という説を語り出す。わたくしは自分の正体が四次元の生物ではないかと疑い、隠者のような生活を送るようになる。
登場人物
- わたくし 自分の身体がときどき見えなくなる男。語り手
- 藤田師 わたくしの人相を見て驚く易者
- 白石君 わたくしの話を聞く知人
冒頭部(原文より)
これからわたくしの述べようとする身の上話を、ばかばかしいと思う人は、即座に、後を読むのをやめてもらいたい。そして、この本の頁を、ぱらぱらとめくって、他の先生の傑作小説を読むのがいいであろう。銀座の人ごみの中で、縮れ毛の女の子にキッスされた話だの、たちまち長脇ざしを引っこぬいて十七人を叩き斬った話だのと、有りそうでその実有りもしない話に、こりゃ本当らしい話だと、うつつをぬかすような手合に、これからわたくしの述べようとする、無さそうでその実本当にある話を読んでもらっても、とても真の味はわからないであろうから。(もっとひどい言葉でいいたいところだが、冒頭だから、敢て遠慮をしておく)。 さて、もうこの行のあたりを読んでいてくださる読者は、十中八九、真にわたくしの気持に理解のある粒よりの高級読者だけが残っておられることと思い、わたくしはそろそろ安心して本調子の話をすすめようと思うが、しかしまだ幾分ゆだんは出来ないぞ。
「第四次元の男」海野十三(青空文庫)
末尾部(原文より)
近頃しらべてみたところ、わたくしの父母は未詳である。つまり、拾われた子であることがわかった。だから、人間の母胎から生れてきたかどうか、その辺のことはすこぶる疑わしいこととなった。だが誰でも、自分が人間の母胎から生れてきたことをはっきり憶えている者はないであろう。この母の胎内から生れたのだというのは、単に誤伝に過ぎない。故に、実際は、わたくしと同様四次元の生物でありながら、うっかりしていて、それと知らないで過ぎている人が案外少なくないのではないかと思う。 そういう人は、よく注意をしていなければならない。往来やその他で、人にどすんと突き当られたときは、一応この疑いを持って(自分の姿が、今、相手に見えなかったのではないか、自分は四次元の生物の切断面(?)ではないか)と、反省してみる要があろう。
「第四次元の男」海野十三(青空文庫)
原文を読む
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