リイズ(太宰治)のあらすじ・登場人物
ルノワールを夢見る画家
- 風刺
- 青春
- 文字数
- 3,359字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
1940年(昭和15年)に発表された掌編。洋画家の杉野君がルノワールの「リイズ」のような絵を描こうとモデルを呼ぶが、現れたのは思いもよらぬ人だった。友人の「私」が内気な杉野君を見守る語りで、画家の滑稽な空回りと、母の優しさがほほえましく描かれる。
あらすじ
二十八歳の洋画家・杉野君は、母と二人暮らしで内気な性格。「私」が訪ねたある日、彼は初めて自宅のアトリエにモデルを呼び、ルノワールの「リイズ」のように白いドレスを着せ、桜の木の下に立たせようとしていた。だが現れたのは丈夫で太った素朴な娘で、靴も履かず、杉野君は「これではゴーギャンのタヒチの女だ」と嘆き、不機嫌のまま旅に出てしまう。数日後、私が訪ねると、そのモデルは白いエプロンをして女中として働いていた。母は、画家の息子のためにモデルを捜しに上野へ行ったが、ひとり目立った娘の身の上を聞いて不憫に思い、絵がだめでも彼女をしくじらせたくなかったのだと笑う。
登場人物
- 杉野君 二十八歳の洋画家。母に甘える内気な青年
- 母 杉野君の母。息子の画を支えつつ、モデルの娘を気遣う
- モデルの娘 房州の漁師の娘。上京したばかりで素朴
冒頭部(原文より)
杉野君は、洋画家である。いや、洋画家と言っても、それを職業としているのでは無く、ただいい画をかきたいと毎日、苦心しているばかりの青年である。おそらくは未だ、一枚の画も、売れた事は無かろうし、また、展覧会にさえ、いちども入選した事は無いようである。それでも杉野君は、のんきである。そんな事は、ちっとも気にしていないのである。ただ、ひたすらに、いい画をかきたいと、そればかり日夜、考えているのである。
「リイズ」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いいえ、そんな事。」とお母さんは笑いながら打消して、「私だって、あれにいい画をかかせたいし、なるべくなら姿のいいひとを選んで来たいと思って行ったのですが、なんだか、あそこの家で大勢のならんで坐っている中で、あのひとだけ、ひとり目立っていけないのですものね。つい不憫になって、身の上を聞きましたら、あなた、東京へつい先日出て来たばかりで、人からモデルはお金になると聞いて、こうしてここに坐っているというんでしょう? あぶない話ですものねえ。房州の漁師の娘ですって。私は、せがれの画がしくじっても、この娘さんをしくじらせたくないと思いました。私だって、知っていますよ。あの娘さんじゃ、画になりません。でも、せがれには、またこの次という事もあります。画かきだって何だって、一生、気永な仕事ですから。」
「リイズ」太宰治(青空文庫)
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