蕗問答(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
忘れ寒森の痛快な人物眼
- 歴史
- 風刺
- 文字数
- 6,902字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 秋田県
この作品について
山本周五郎が1940年(昭和15年)、「富士」に発表した時代小説。秋田藩の年寄役・寒森新九郎は、強情で圭角が多く、おまけに人並みはずれた健忘家で「忘れ寒森」と呼ばれる。そんな欠点だらけの重臣が、その特異な人物眼で見せる痛快な一幕を、ユーモラスに描いた一編である。
あらすじ
寒森新九郎は秋田藩士。八百石あまりで、佐竹家では由緒ある家柄、代々「年寄役」として重きをなしていた。年寄役とは顧問官のようなもので、藩政を鑑査し、時には主君の命令をも否決する、憎まれ役の顕要な地位である。新九郎は二十五歳で家督を継ぎ、五年のあいだ筆頭の席を占めて、その難しい役目を明敏に処理してきた。——といっても、円満で才気縦横な人物というわけではない。強情で圭角が多く、おまけに人並みはずれた健忘家で、その物忘れのひどさから「忘れ寒森」とあだ名されるほどだった。それでいて要職を立派に勤めえたのは、その性格の欠点までが役立つような、特異な人徳があったからにちがいない。そんな欠点だらけの重臣が、人を見る眼にかけては誰にも負けなかった。物語の結び、新九郎は、にこにこ笑いながら胸を張って言う。「新九郎がこうと見込んだ者に、かつて誤りはござりませぬ、なにしろ凡眼ではござりませんでな」。巨きな眼をぎろりと剥いて——それが、寒森新九郎一代の得意な場面だった。欠点だらけの重臣の痛快な人物眼を、ユーモラスに描いた、山本の一編である。
登場人物
- 寒森新九郎 秋田藩の年寄役。「忘れ寒森」
冒頭部(原文より)
寒森新九郎は秋田藩士である。 食禄は八百石あまりだが佐竹では由緒のある家柄で、代々年寄役として重きをなしていた。年寄役とは顧問官のようなもので、閑職ではあるが重臣だけが選ばれる顕要な地位である。
「蕗問答」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「恐れながら」 今度はこっちの番だというように、新九郎はにこにこ笑いながら胸を張って云った。 「新九郎がこうと見込んだ者に、かつて誤りはござりませぬ、なにしろ凡眼ではござりませんでな」 巨きな眼をぎろりと剥いて、寒森新九郎一代の得意な場面であった。
「蕗問答」山本周五郎(青空文庫)
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