屋根裏の犯人――『鼠の文づかい』より――(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
大晦日の風呂と銀包み
- 風刺
- 歴史
- 文字数
- 6,891字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1953年1月『キング』に載った江戸ものの諧謔小説。副題に「『鼠の文づかい』より」とある。大晦日の煤払いの日に、伊勢屋で一年に一度の風呂をふるまわれた医者の妙庵が、物惜しみの隠居の嘆きを前に、山伏のからくりや鼠の芸を持ち出して一座の疑いを解こうとする。講談のような語り口の一編である。
あらすじ
大晦日、医者の妙庵先生は、年に一度の煤払いの風呂に呼ばれて伊勢屋へ出かける。ケチな隠居は、去年の元日に妹から貰った銀一包みを盗まれたと風呂場で泣く。祈ってもらった山伏は、ゴマ壇にからくりを仕掛けて金を取る仕掛け山伏だったと、妙庵は見破る。屋根裏の煤を払っていた小僧が銀包みを見つけるが、隠居は「頭の黒い鼠が盗んだ」と譲らない。妙庵は孝徳天皇の年代記を持ち出し、さらに鼠使いの藤兵衛を呼んで、鼠が物をくわえて遠くへ運ぶ芸を見せ、隠居を納得させる。ところが隠居は、盗み心のある鼠を飼っていた母家の責任だと言い出し、一年分の利子を取り立てて、ようやく満足して寝る。
登場人物
- 妙庵 下情に通じた医者
- 伊勢屋の隠居 物惜しみの老婆
- 源兵衛 伊勢屋の主人
- 藤兵衛 鼠つかい
冒頭部(原文より)
その日は大晦日です。何者か戸を叩く音に、ヤモメ暮しの気易さ、午ちかくまで寝ていた医者の妙庵先生、起きて戸をあけると、 「エエ、伊勢屋源兵衛から参りましたが、本日はお風呂をたてましたので例年の通り御案内にあがりました。どうぞお運び下さいまし」
「屋根裏の犯人――『鼠の文づかい』より――」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
「それでは」 と御隠居は紙とスズリをかりて請取りをしたため爪バンをおし、おしいただいて利息と交換いたしました。 「まずまず、これで本当の正月ができます」 隠居は満足して膝のホコリを払って立上り、隠居屋へ戻ってグッスリひと寝入りをいたしましたとさ。
「屋根裏の犯人――『鼠の文づかい』より――」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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