明暗嫁問答(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
老家老の嫁取り人情喜劇
- 歴史
- 風刺
- 文字数
- 20,577字
- 読了目安
- 約41分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 広島県
この作品について
山本周五郎が1946年(昭和21年)、「講談雑誌」に発表した時代小説。備後福山藩の老国家老・高滝勘太夫と、養子に迎えることになった甥・直二郎をめぐる、嫁取りの一件を描く。頑固で照れ屋の老人の振る舞いに、ユーモアと人情がにじむ、あたたかな一編である。
あらすじ
備後の福山藩、阿部伊予守十万石の国家老・高滝勘太夫は、五十歳。妻に先立たれて以来、女の召使を一人も置かず、男ばかりの殺風景な暮らしをしていた。実子がないため、江戸詰めの弟・源左衛門の二男・直二郎を養子に迎え、跡目を譲ることになっていた。ところが源左衛門は、「直二郎は思わしくないから三男の松之丞に」と言ってくる。ようすを探ると、直二郎は男ぶりも武芸も学問もすぐれ、家中の人気を一身に背負う「またとない養子」で、じつは弟が惜しくて手放したくないだけだった。勘太夫は「直二郎のほかには松も杉もいらん」と、直二郎の名を二十遍も書いた手紙を送りつける。やがて迎えた直二郎が連れてきた女・お笛をめぐって、老人は鋭い眼を見せる。物語の結び、勘太夫は江戸の甥へ手紙を書く。お笛を娶ることを承知したこと、彼女の素性を篤と見抜いたこと。そして——じつは勘太夫の亡き妻お信こそ、若き日に江戸で娶った柳橋の名妓お紋だった、という秘密まで打ち明ける。「伯父、甥と、二代つづいての粋な妻、こはこれ断じて世に誇るものには之無く候」と言いながら、老人はたいそう鼻が高い。窓からとび込んだきりぎりすが、澄んだ音で鳴きだすのだった。頑固で照れ屋の老人の情を、ユーモアたっぷりに描いた、山本の一編である。
登場人物
- 高滝勘太夫 福山藩の老国家老
- 直二郎 勘太夫の養子となる甥
- お笛 直二郎が連れてきた女
冒頭部(原文より)
備後のくに福山藩、阿部伊予守十万石の国家老に高滝勘太夫という老人がいた。食禄は千石、年はその時五十歳で、六年ほどまえに妻に先立たれて以来、屋敷には女の召使をひとりも置かず、男ばかりの殺風景な暮しをしている。
「明暗嫁問答」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「お笛を娶ること承知致しそろ」と、勘太夫は江戸の甥へ手紙を書いた、「……国老職を継ぐべきそのもとの妻として、又なき素性資質たること、拙者こそ篤と見ぬき申し候」 書いている脇の窓から、一匹のきりぎりすがとび込んで来て行灯にとまったが、そのとき澄んだ音を張って鳴きだした。
「明暗嫁問答」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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