アプリで読む

無料・登録不要

曽我の暴れん坊(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

箱根の天狗は食い気一筋

  • 歴史
  • 風刺

坂口安吾 1954年(昭和29年)5月 「キング」

文字数
9,123字
読了目安
約18分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

仇討ちで知られる曽我兄弟のうち、弟の五郎時致(幼名箱王)を暴れん坊の少年として描いた、坂口安吾の歴史ユーモア小説。昭和29年、大衆雑誌「キング」に発表された。箱根の寺で肉を食らい山を荒らす箱王が、出家を逃れて元服し、兄十郎の女性関係に巻き込まれながら大磯の遊里で顔役になってゆく。章ごとに「女難により居候失脚のこと」などの題がつき、くだけた口語で語られる軽い読み物である。

あらすじ

曽我の太郎の継子、箱王は十一歳にして桜の若木を一刀両断にする怪童で、母の満江は仇討ちの噂が立つことを恐れ、彼を箱根の寺に預けて出家させようとする。箱王は寺で鳥獣を捕って食い、山中で鍛えて六尺の大男に育つが、得度の前夜に寺を逃げ出し、兄の十郎のもとで北条時政を烏帽子親に元服して五郎時致となる。ところが母は怒って勘当を言い渡す。十郎は五郎を連れて親類の家を転々と居候するが、十郎は女にもてすぎて行く先々で騒動を起こし、そのたびに夜逃げするはめになる。追手の郎党や従妹の夫の平六を、五郎が大石を持ち上げたり矢でトビを射落としたりして威圧する場面も続く。やがて二人は大磯の長者の娘で十郎の恋人、虎のもとに身を寄せる。五郎は悪侍の一団を松の木の一振りで追い払って町の顔となり、十郎は虎を連れて曽我の閑居に戻る。残された五郎は食っては立ち回りの稽古をして三年を過ごし、東海道の松や大石を引き抜いて回る。

登場人物

冒頭部(原文より)

ある朝、曾我の太郎が庭へでてみると、大切にしている桜の若木がスッポリ切られている。 「何者のイタズラかな」  しかし切口を見ると、おどろいた。直径二寸五分ほどもある幹を一刀両断にしたもの、実に見事な切口。

「曽我の暴れん坊」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

置き残された五郎、待遇がすごく好いから大喜び。食っては立廻りの稽古をし、食っては立廻りの稽古。食うのと、立ち廻りと、寝ることのほかには何も考えない。  例の道案内の白拍子念々は腹をたてて、 「ねえ、アンタ。ここをどこだと思うんだい。特飲だよ。遊ぶ女がいるんだよ。料理ばかり食ってないで、たまには女にも手をつけなよ」 「女は、うまいか」 「それは、うまいよ」 「サシミにするのか。塩焼きにするのか」 「チェッ。バカだよ、このデブチンは。ほんとに女を食うつもりらしいね」  念々もサジを投げざるを得ない。  五郎は大磯ですっかり顔になってしまった。大磯ばかりではなく、五里も十里もはなれた宿の遊び場からも、面倒が起ると、五郎のところへとんできて、 「ねえ、五郎さん。たのみますよ。また悪侍の一味の奴が上りこんで」 「オレは事情があって一命が」 「よしてくれよ。こッちは真剣なんだから」 「イノシシを食わせるか」 「ああ、いいとも。二匹でも三匹でもゴチソーするよ。ついでに庭の松の木の場所をかえようと思ってるんだが、ちょッとひッこぬいてくんなよ」  なぞとしきりにお座敷がかかってくる。三年間こんな生活をしていた。五郎、大多忙、東海道の松の木や大石をどれぐらい引ッこぬいたり、動かしたりしたか分らない。

「曽我の暴れん坊」坂口安吾(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品