若殿女難記(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
遊里に通うお忍び若殿の喜劇
- 歴史
- 風刺
- 文字数
- 22,622字
- 読了目安
- 約45分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 静岡県
この作品について
山本周五郎が1948年(昭和23年)、「講談雑誌」に発表した時代小説。東海道金谷の宿の遊里に、毎晩通ってくる、飛びぬけた美男でずばぬけて金放れのいい侍客。じつはその正体は、お忍びで探索にあたる若殿さまだった——。女に言い寄る役目に翻弄される若殿の姿を、軽妙な笑いで描いた、痛快な一編である。
あらすじ
東海道金谷の宿はずれに、なまめかしい一廓がある。大井川の出水で川止めとなり、旅客であふれた宿場のにぎわいが、この遊里にもこぼれてくる。その「おそめ」という店へ、毎晩やって来る侍客があった。こんな所へ来る侍はたいてい足軽か徒士と決まっているのに、その客は着物も立派で、飛びぬけた美男、おまけに恐ろしく金放れがいい。朴訥な遊女はすっかり魅惑され、「まるでお大名の若殿みてえだ」とはしゃぐ。「案外そうかも知れねえ」と客は笑うが——じつは、それは冗談ではなかった。この美男の客の正体は、あるたくらみを探るため、お忍びで遊里に通う若殿・大助さまその人だったのだ。表の暗がりには、いつも腹心の宙野や金吾が控えて、頃合いを見て若殿を連れ帰る。女を口説く役目に振り回されながらも、大助さまは一味の探索を進めていく。やがて事件はめでたく解決。腹心たちと心おきなく酒を酌みかわしたとき、若殿は言う。「今なにがいちばん嬉しいかわかるか——それはもう、女を口説かなくともよくなったことだよ」。軽妙な笑いに満ちた、痛快な時代小説である。
登場人物
- 大助さま お忍びで遊里に通う若殿
- 宙野・金吾 若殿の腹心の士
冒頭部(原文より)
東海道金谷の宿はずれに、なまめかしい一廓がある。間口の狭い平べったい板屋造りで、店先にさまざまな屋号を染出した色暖簾を掛け、紅白粉の濃い化粧をしたなまめかしい令嬢たちが並んでいる。茶屋小料理めかしたり、土産物を売る態に拵らえているが、食事をしに入ったり土産物を買いに寄ったりするとひどいめにあう。
「若殿女難記」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「これでどうやら、事はおさまった。みんなおまえたちの助力のお蔭だ、――しかしおれにとって、今なにがいちばん嬉しいかわかるか」 若さまこう云って、にこりとお笑いなされた。 「――それはもう、女を口説かなくともよくなったことだよ」
「若殿女難記」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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