風流化物屋敷(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
化物屋敷で芽ばえる恋の喜劇
- 歴史
- 風刺
- 文字数
- 20,237字
- 読了目安
- 約40分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 広島県
この作品について
山本周五郎が1947年(昭和22年)、「講談雑誌」に発表した時代喜劇。広島城下の「柘榴屋敷」と呼ばれる化物屋敷に、大名家老の三男・御座平之助が越してくる。世にも純真無垢なこの若侍と、化物屋敷の熱心な観察者である隣家の娘・とみとの、井戸端でのおかしなやりとりを描く。化物の正体という謎と、初々しい恋の芽ばえを、軽妙洒脱な筆致でつづった、笑いに満ちた一編である。
あらすじ
安芸の広島城下、武家町のはずれに、七、八年も空家のままの一軒があった。住もうとする者はいても、いくじの無い者は夜中まで保たず、蒼くなって逃げだす——庭にそびえる大きな柘榴の木にちなんで「柘榴屋敷」と呼ばれる、名うての化物屋敷である。隣家の娘・とみは、幼い頃から「ものに驚く」のが大好きで、この化物屋敷の怪異を、科学的なまでに詳細な備忘録に書きとめている熱心な観察者だった。そこへ、一人の若侍が越してくる。浅野家の江戸家老・植田主水の三男で、御座姓を継いだ平之助。一万二千石の大名並みの家に育ちながら、彼は「純真無垢で生一本で明けっ放し」、神か白痴の社会にしかいないような、途方もなくおおらかで明るい男だった。毎朝、井戸端で顔を合わせる平之助ととみ。化物が出たかどうかを尋ねるとみに、平之助はのんびりと「一つ目小僧が茶を持って来た」などと答える。じつは化物の正体は、屋敷を賭場に使う博奕打ちたちの仕業だったのだが——。とみは生垣を毟りながら真っ赤になり、いつしか化物の話は洗濯や食事の世話へ、そして縁談へと移っていく。化物屋敷の怪と、初々しい恋の顛末を、抱腹絶倒の会話で描いた、山本の時代喜劇である。
登場人物
- 御座平之助 柘榴屋敷に越してくる純真無垢な若侍
- とみ 化物屋敷を観察する隣家の娘
冒頭部(原文より)
安芸のくに広島は浅野家四十二万六千石の城下で、市中の家数一万余軒、商品が自由交易性のため他国から出入りする商人も多くて、中国地方第一の名にそむかない繁昌な土地であった。……この繁華な広島城下のしかも武家町の中に一軒の化物屋敷があった。城の東に縮景園という藩侯の泉邸がある、場所はその近くで、武家町としては端れのほうだったが、もう七八年というもの空家になっていた。
「風流化物屋敷」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
同じとき三浦家では、とみ嬢が備忘録にこう書いていた、「あの方はお申込みになるに違いない、そうしたら私はきっぱり断わるわ。ええきっぱりと、そして尼寺へはいって一生きよらかに、あの方を想って泣きながら暮すわ。……でも衣装は模様物なんか止すわ、どうせ一度きりですもの、それより秩父織とか紬とか実用向の物をたくさん作って頂くことだわ、でもそうするとお式にはなにを着たらいいかしら、ああ困った、心配だわ心配だわ……」
「風流化物屋敷」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
近い作品
- 屋根裏の犯人――『鼠の文づかい』より―― 1953年(昭和28年)1月
- 決戦川中島 上杉謙信の巻――越後守安吾将軍の奮戦記―― 1953年(昭和28年)8月
- 曽我の暴れん坊 1954年(昭和29年)5月
- 備前天一坊 1928年(昭和3年)
- 権三と助十 1926年(昭和元年)7月
- 糸女覚え書 1924年(大正13年)1月