三悪人物語(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
忍者八百助の痛快な悪人退治
- 歴史
- 風刺
- 文字数
- 29,004字
- 読了目安
- 約58分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1948年(昭和23年)、「新読物」に発表した諧謔的な伝奇物語。「艶妖記」に続く、飛騨の玉造りの少年・八百助の物語で、日本唯一の自由都市・佐貝を舞台に、忍術をあやつる八百助が三人の悪人を痛快に懲らしめる。笑いと奇想にみちた一編である。
あらすじ
井住のくに佐貝は、中世日本における唯一の自由都市だった。巨万の富を擁し、共和自治のもとで「南欧ベニスのごとし」と称されたこの市も、やがて織田信長や豊臣秀吉に叩かれ、大阪の陣で焦土となり、徳川氏の代官所在地に成り果てる。米一日一合、酒・菓子・煙草は禁制——そんな殺伐とした佐貝を舞台に、「艶妖記」でおなじみの、飛騨の玉造りの少年・八百助が活躍する。跛で片眼、傴僂という三重苦の身でありながら、忍術の妙をきわめた八百助が、市にはびこる三人の悪人を、次々と痛快に懲らしめていくのだ。物語の結び、八百助は悪人・出来六に幻術をかけて踊り狂わせ、その胸に罪状を書いた紙を石で押えて置く。「踊りたいだけ踊るがいい、牢舎の仲間にさぞ喝采されるだろう」。そして「さて帰ろう、故郷の山へ、吹矢村のなつかしい安息所へ」と。奉行所には本物の監察使が到着し、仕上げにかかっていた——三悪人は、まだ土ぼこりをあげて走っている。笑いと奇想にみちた、山本の諧謔伝奇である。
登場人物
- 八百助 忍術をあやつる三重苦の少年
- 出来六 懲らしめられる悪人のひとり
冒頭部(原文より)
井住のくに佐貝は中世日本における唯一の自由都市であった。永禄四年にキリスト教伝道のため佐貝へ来たヴィレラ師は、「――他の都市が戦乱によって惨害を受けている時、佐貝のみは平和と独立と特権と自由を保持し、共和政治の下に極めて安穏に富み栄えている。その状あたかもベニスのごとくである」と記している。
「三悪人物語」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「踊りたいだけ踊るがいい、牢舎の仲間にさぞ喝采されるだろう」八百助はこう云って振り返った、「さて帰ろう、故郷の山へ、吹矢村のなつかしい安息所へ」 蛇足を加えれば、そのとき奉行所へは本物の監察使が到着し、八百助の後をうけて仕上げの最中だった、――三悪人はまだ走っている、懸命に走っている、土ぼこりをあげて……どうやら彼らは永久に走るつもりらしい。
「三悪人物語」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
近い作品
- 屋根裏の犯人――『鼠の文づかい』より―― 1953年(昭和28年)1月
- 決戦川中島 上杉謙信の巻――越後守安吾将軍の奮戦記―― 1953年(昭和28年)8月
- 曽我の暴れん坊 1954年(昭和29年)5月
- 備前天一坊 1928年(昭和3年)
- 権三と助十 1926年(昭和元年)7月
- 糸女覚え書 1924年(大正13年)1月