地球を狙う者(海野十三)のあらすじ・登場人物
火星近づく夜の惨劇
- SF
- 冒険
- 文字数
- 14,500字
- 読了目安
- 約29分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
火星に近づく、と報じられる中、南洋の孤島で老博士が惨殺される。火星研究で知られる博士一行とともに地震観測所へ赴任する若き理学士の「僕」が、孤島で出会う怪事件と、博士の手帖に記された恐るべき秘密をたどる、海野十三の少年向けSF冒険小説。火星の接近を背景に、地球に忍び寄る未知の脅威を描く。
あらすじ
理学士・大隅圭造は、小笠原の父島から地震観測所のある花陵島へ向かう船で、火星研究で有名な轟博士と、美しい助手・志水サチ子に出会う。花陵島に着いた一行だが、やがて島で殺人事件が起こり、博士の様子にも不審な点が現れる。大隅はサチ子とともに、博士が残した手帖の記述を頼りに、火星の接近と島で起こる怪事件との関わりを突き止めていく。やがて、地球を狙う者の正体が明らかになり、二人は火星の脅威に立ち向かう決意を固める。
登場人物
- 大隅圭造 花陵島の地震観測所へ赴任する理学士で、物語の語り手
- 轟博士 火星研究で知られる天文学者
- 志水サチ子 博士の助手を務める理学士の若い女性
- 加瀬谷教授 大隅の恩師で、博士の旧友
冒頭部(原文より)
「おいボーイ君。この汽船は、ガソリンの切符をなくしでもしたのかね」 「え、ガソリンの切符ですって?」 ボーイは、酒壜をのせたアルミの盆をさげたまま、舷側にだらりともたれかかっている僕の顔を呆れたような目でみて、 「これはどうもおそれいりました。いくらなんでも、この汽船は円タクなどとはちがいまして、ガソリンなんぞ使いやいたしませんので……」 それを待っていましたとばかり、僕はいってやった。
「地球を狙う者」海野十三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「――火星の生物が、地球へ攻めてくるときには、まず最初われら人間と同形をした耐圧外被をかぶってやってくるであろう。それは人間にちかづいたとき、相手から警戒せられないためだ。これは想像だけではない。現に自分は昨夜、居室の窓外から妙な奴がこっちをうかがっているのを見かけた。そやつは、奇怪にも余と同じ顔をしていたのには、ぞっとした。もしあれが火星の生物だとしたら、余は生命の危険を感じる。なぜなら、そやつは人間界の情報をあつめるため怪しまれることなくわれらの同胞に近づく手段として、いつ余と入れかわらないともかぎらないからである。だが今さら余が騒いでもなにになろう。火星の生物に手向かうことは不可能だ。ただ余は、ここに『死後のメモ』を書きのこして、万一の場合の参考にする」 尊い博士の手記であった。それが手にはいらなければ、サチ子も僕も、どうなったかわからない。 火星の生物が、なぜ高等植物の進化したものであるか分らないが、植物であることは、偽博士の身体の中からでてきた草色のどろどろの粘液が、それを証明していると思う。それを疑う人は、そこから一本の草をとってきて、どんな汁が出て来るかねじってみるがいい。 火星の生物は、サチ子を喰べようとしたのであった。その前に、彼はまず轟博士を喰い、その次に下婢のマリアを喰べたのだ。博士の小屋の裏手にある三本椰子の下、サチ子がみつけたバラバラ死体の埋めてあった所を掘り返してみると、その中から、果然老いた男と若い女と都合二体の骨格や、喰いかけの手足などがでてきたことによっても知れる。 この事件がかたづいて、僕とサチ子の仲は、急速に近づいた。しかし片づかないものは、地球にだんだん近づいてくる火星のことであった。われわれ二人は、博士の遺志をついでこの花陵島にたてこもり、あくまで火星の生物に対抗しようとかたく誓ったことであった。
「地球を狙う者」海野十三(青空文庫)
原文を読む
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