アプリで読む

無料・登録不要

盈虚(中島敦)のあらすじ・登場人物

満ちれば欠ける人の世の無常

  • 歴史
  • 心理

中島敦 1942年(昭和17年)7月 「政界往来」

文字数
7,283字
読了目安
約15分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

中島敦が1942年(昭和17年)、「政界往来」に「牛人」とともに発表した短編小説。「春秋左氏伝」に取材した中国物の一編である。春秋時代の衛の国を舞台に、傲慢で非情な太子・蒯聵(かいがい)の波乱に満ちた生涯を描く。題の「盈虚」は月の満ち欠けのこと。栄枯盛衰をくり返す人の世と、権力をめぐる非情な人間模様を、中島が漢文調の格調高い文体で刻んだ一編である。

あらすじ

春秋時代、衛の霊公の世。太子・蒯聵(かいがい)は、あるとき、畑を耕す農夫たちが自分をあざける奇妙な唄を歌うのを耳にする。傲慢で気の強い蒯聵は、それを恥じて激昂し、無謀な企てに走ったすえに、国を追われて他国へと流亡する。父の死後、蒯聵の子・輒(ちょう)が衛侯の位に即くと、こんどは父と子が国をめぐって争うという、むごたらしい骨肉の相剋が始まる。流転の果てにようやく帰国し、位を奪って衛侯となった蒯聵だったが、その非情な振る舞いは人心を離れさせ、彼もまた、追いつめられて悲惨な最期を遂げる。璧(宝玉)に執着したまま殺されていく男に、「お前を殺せば、璧が何処かへ消えるとでもいうのかね」と嘲笑が浴びせられる。満ちれば欠ける月のように、栄枯盛衰をくり返す人の世の無常と、権力をめぐる非情な人間模様を、中島が漢文調の格調で描いた中国物の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 衛の霊公の三十九年と云う年の秋に、太子が父の命を受けて斉に使したことがある。途に宋の国を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌うのを聞いた。

「盈虚」中島敦(青空文庫)

末尾部(原文より)

 己氏は蕃刀の鞘を払って近附きながら、ニヤリと笑った。 「お前を殺せば、璧が何処かへ消えるとでもいうのかね?」  これが衛侯の最期であった。

「盈虚」中島敦(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品