復員殺人事件(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
復員した兄は本物か
- ミステリ
- 文字数
- 96,646字
- 読了目安
- 約3時間13分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 神奈川県
この作品について
1949年から翌年にかけて雑誌「座談」に連載された、坂口安吾の長編推理小説。「不連続殺人事件」の巨勢博士が再び登場し、小田原の旧家で戦時中に起きた轢死事件と、傷だらけで復員した次男は本物かという疑いをめぐって、連続殺人が起こる。読者への挑戦つきだったが、掲載誌の廃刊で中断し、安吾の生前には完結しなかった。のちに高木彬光が続きを書き、『樹のごときもの歩く』として完結させている。
あらすじ
終戦から二度目の八月十五日を過ぎた秋、小説家の矢代寸兵は、友人の私立探偵巨勢博士を有楽町の事務所に訪ねる。そこでは小田原の旧家倉田家の三男でボクシングのバンタム新人王の定夫と、妹の美津子が依頼を済ませたところだった。昭和十七年、倉田家の長男公一とその子仁一が線路脇で轢死体となって見つかり、その一週間後に次男の安彦に召集令が来た。その安彦が「丹下左膳」のような重傷の姿で復員してきたが、顔かたちも別人のように変わり、本物かどうかさえ分からない。美津子は、兄は犯人を知っているからこそ狙われると訴え、手型の照合を頼む。手型は一致する。巨勢博士と矢代が小田原へ向かうと、倉田家では滝沢起久子が射殺され、安彦も絞殺される事件が起こる。朝鮮の新宗教をめぐる密入国の動きや、復員者はニセモノではないかという証言まで浮上して、事態は混迷を深める。そして九月二十三日、定夫がフグ中毒で死亡したところで、安吾の執筆分は途切れる。
登場人物
- 矢代寸兵 語り手の小説家
- 巨勢博士 探偵事務所を営む私立探偵
- 倉田安彦 重傷を負って復員した次男。本物か疑われる
- 倉田定夫 バンタム級新人王の三男
- 倉田美津子 次女。兄の危険を訴える
冒頭部(原文より)
終戦の年から二度目の八月十五日を迎え、やがて秋風の立つ季節になった。 その暮方、私はちょうど小説を脱稿したので、久し振りに巨勢博士の探偵事務所を訪ねた。そこは有楽町駅に近いビルの一室で、私の行きつけの裏口飲み屋に目と鼻のところであるから、博士を誘って一杯飲もうと思ったのである。
「復員殺人事件」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
さすがの大矢捜査主任も、どうしたワケかムッツリと考えこんでしまった。ひどく不キゲンの様子であった。いつも重吉におどろかされるせいだろうか。 私にはワケが分らず、巨勢博士を見ると、彼も妙に考えこんでいるようだ。 それをニヤニヤ眺めているのが、重吉である。 そのとき、刑事の一人が報告にきた。 「ただ今、八雲先生から報らせがありましたが、定夫は死亡しました。死因は、フグ中毒にまちがいないそうです」
「復員殺人事件」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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