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戯作三昧(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

馬琴が入りゆく創作の三昧境

  • 歴史
  • 心理

芥川龍之介 1917年(大正6年)11月 「大阪毎日新聞」

文字数
20,808字
読了目安
約42分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

「南総里見八犬伝」で知られる江戸後期の戯作者・曲亭馬琴のある一日を描いた歴史小説。銭湯での不快な出来事、俗物の来客、家庭内の些事に煩わされながらも、老作家がやがて創作の恍惚——芸術の三昧境——へと入っていく過程を克明に追う。名声と現実の板挟みに苦しむ芸術家の内面に、芥川自身の創作への信念を重ねて描いた作品で、芥川の芸術至上主義を示す一編としてしばしば取り上げられる。

あらすじ

天保二年の秋、老作家の曲亭馬琴は行きつけの銭湯で見知らぬ男に「八犬伝」の悪口を浴びせられ、不快な思いを抱いて帰宅する。その後も、儲け話を持ち込む本屋、教えを乞う若い戯作者、金の無心をする俗物など、次々に現れる訪問者に応対しては、いちいち心を波立たせる。世間の毀誉褒貶に神経をすり減らし、自作への疑念と自負のあいだで揺れながら、馬琴は「自分の書くものは後世に残るのか」と問い続ける。孫の太郎の無邪気な言葉に励まされて書斎に籠もった彼は、やがて雑念を離れ、筆がおのずと動き出す忘我の境地——三昧境——へと達する。その恍惚のうちでは、名声も生活の苦労も、毀誉褒貶もことごとく忘れ去られ、ただ書くことの歓喜だけが老作家を満たしていた。一方、そんな馬琴を家族は「またお書きもので夢中になっている困り者」と眺めるばかり。書斎にも茶の間にも、蟋蟀が変わらず秋を鳴きつくしているのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

天保二年九月のある午前である。神田同朋町の銭湯松の湯では、朝から相変らず客が多かった。

「戯作三昧」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

お百はこう言って、伜と嫁とを見た。宗伯は聞えないふりをして、答えない。お路も黙って針を運びつづけた。蟋蟀はここでも、書斎でも、変りなく秋を鳴きつくしている。

「戯作三昧」芥川龍之介(青空文庫)

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