グッド・バイ(太宰治)のあらすじ・登場人物
太宰絶筆の諧謔喜劇
- 風刺
- 文字数
- 14,832字
- 読了目安
- 約30分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
太宰治が1948年(昭和23年)、「朝日評論」に発表した連作の未完長編で、作者の絶筆となった作品。妻子ある編集者・田島は、戦後の混乱に乗じて数多くの女たちと関係を結んでいたが、心を入れかえて彼女たちすべてと縁を切ろうと決意する。そこで思いついたのが、飛びぬけた美貌の大女・永井キヌ子を仮の妻に仕立て、女たちの前に連れ歩いて別れ話を切り出す、という奇策だった。軽妙な会話と喜劇的な設定で綴られる異色の諧謔小説だが、第十三回の途中で作者の死により中絶した。太宰の意外なまでに明るい笑いの資質を伝える、幻の遺作である。
あらすじ
文壇の老大家の告別式の帰り道、雑誌編集者の田島周二は、戦後のどさくさの中で自分がいつのまにか十人近い女たちと関係を持ってしまったことに思い当たる。妻子のもとへ立ち返ろうと決心した田島は、これまでの女たちすべてに「グッド・バイ」を告げようとするが、正面から別れ話をするのは剣呑きわまりない。そこで彼が思いついたのは、飛びぬけて美しく、しかも力持ちの大女・永井キヌ子を「妻」と偽って女たちの前に同伴し、これほどの美人の恋女房がいるのだと見せつけて、相手にあきらめさせるという計略だった。もとは闇屋まがいの荒っぽい仕事をしていたキヌ子を法外な報酬で雇い入れ、田島はにわか仕立ての偽夫婦を演じながら、女たちのもとを一軒また一軒とめぐっていく。ところが、絶世の美貌に似合わぬキヌ子の大食らいと図太さに翻弄され、計画はしばしば思わぬ方向へ転がっていく。軽妙な会話が笑いを誘う喜劇として快調に滑り出したこの物語は、しかし第十三回の冒頭で、作者・太宰治の入水自殺により、永遠に未完のまま断ち切られた。
登場人物
- 田島周二 女たちと縁を切ろうとする雑誌編集者
- 永井キヌ子 偽の妻を演じる美貌の大女
冒頭部(原文より)
文壇の、或る老大家が亡くなって、その告別式の終り頃から、雨が降りはじめた。早春の雨である。 その帰り、二人の男が相合傘で歩いている。いずれも、その逝去した老大家には、お義理一ぺん、話題は、女に就いての、極めて不きんしんな事。紋服の初老の大男は、文士。それよりずっと若いロイド眼鏡、縞ズボンの好男子は、編集者。
「グッド・バイ」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いいかい? たぶん大丈夫だと思うけどね、そこに乱暴な男がひとりいてね、もしそいつが腕を振り上げたら、君は軽くこう、取りおさえて下さい。なあに、弱いやつらしいんですがね。」 彼は、めっきりキヌ子に、ていねいな言葉でものを言うようになっていた。 (未完)
「グッド・バイ」太宰治(青空文庫)
名文
文壇の、或る老大家が亡くなって、その告別式の終り頃から、雨が降りはじめた。早春の雨である。
太宰治『グッド・バイ』(1948年)の書き出し。作者の死によって未完に終わった最後の小説で、告別式の帰り道から軽妙な喜劇が始まる。愛人たちと別れようとする編集者の話を、乾いた調子で語り出す一行。
原文を読む
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