お魚女史(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
魚みたいに喋る美女の襲来
- 風刺
- 文字数
- 9,457字
- 読了目安
- 約19分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1948年『八雲』に載った、坂口安吾のユーモア小説。徹夜明けの「私」の家に、雑誌記者の弁吉が連れてきたのは、魚が喋るように騒がしい、絶世の美女・佐野龍代女史だった。防空壕に住む妾を名乗る彼女は、弁吉や文士たちを手玉に取る。作中に「坂口先生」として本人が顔を出すのも楽しい、戦後すぐの東京郊外のドタバタ劇。
あらすじ
徹夜で原稿を書き終えた「私」の家に、頭の調子が一風変わった雑誌記者・弁吉が、妙な女が来たと言って泊まりこんでいた。連れてこられたのは二十六歳の佐野龍代女史で、整った美貌なのに口を開けばガラリと一変して頓狂で騒々しい。防空壕に住んでいて、六十三の旦那のオメカケだと自称する。弁吉は女史の悪口を言いながら毎週入りびたり、私も路上で出会うたびに、色目を使われ、探偵小説を書いていると迫られて逃げ出す羽目になる。春の嵐の夜、女史は大きなフロシキ包みを下げて訪ねてくる。ちょうど居合わせた評論家・凹井と小説家・般若を相手に、ピースの箱を使った賭けを持ちかけ、弁吉も含め三人とも見事に有り金を巻き上げる。さらにデンスケ賭博で夜通し稼ぎ、女房までが私の紙入れをからにして帰ってくる。その日以来、凹井は女史に会いたくて足繁く私のもとへ通うようになり、弁吉は「四十の恋もつつましいもんだねエ」と笑う。結末は、どうせバカゲタ結末にきまっている、と語り手が肩をすくめて終わる。
登場人物
- 私 徹夜で原稿を書く文士。作中では「坂口先生」と呼ばれる
- 弁吉 ×社の記者。頭のネジが少し狂った愛嬌者
- 佐野龍代 魚のように喋る絶世の美女。老人のオメカケを名乗る
- 凹井狭介 ゴシップ好きの評論家
- 般若有効 憂い顔の小説家
冒頭部(原文より)
その朝は玄関脇の応接間に×社の津田弁吉という頭の調子の一風変った青年記者が泊りこんでいた。私は徹夜で×社の原稿を書きあげたところで、これから酒をのんで一眠りと、食事の用意ができたら弁吉を起そうと考えていた。その弁吉がキチンと身仕度をとゝのえて、ノッソリとあがってきた。 「ねえ、先生、妙な女が現れたよ。キチガイかも知れないねえ」
「お魚女史」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
その日以来、凹井狭介先生が足繁く私を訪問するようになった。理由は申すまでもなくお判りであろう。 弁吉がアゴをなでゝ、 「アハハハ。四十の恋も、案外、つつましいもんだねエ。ハハハア」 などゝニヤリニヤリしているが、その本人も、同じ程度の心境であろう。 成行の程は判らないが、どうせバカゲタ結末にきまっている。
「お魚女史」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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