発掘した美女(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
考古学旅行で恋の大騒動
- 風刺
- 恋愛
- 文字数
- 13,882字
- 読了目安
- 約28分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1953年(昭和28年)11月、「講談倶楽部」に発表された坂口安吾のユーモア小説。老舗の菓子屋の主人と、彼の求婚を渋る美貌の未亡人、大学生の息子の三人が、考古学の発掘旅行を口実に山奥の温泉を訪れる。恋のかけひきを楽しむはずの旅が、原始的な宿と土地の人々のおかしな言動にひっくり返される。飾らない土地の人々と東京の人々のずれを笑う軽快な読み物。
あらすじ
東京の老舗菓子店の主人、梅玉堂は五十三歳。見合いをした三十歳の未亡人、初音サンに結婚を断られ、恋わずらいで神経衰弱になる。大学生の息子の一夫が、初音サンに談判し、考古学の発掘旅行に誘って父との仲を取り持つことにする。一行は関東の山奥の黒滝温泉へ向かい、悪路の末に、谷底の宿に着く。宿の主人は天狗のような顔で、道案内の老人はお握りのような顔をしている。一夫は宿の孫娘、オ花チャンに心を奪われ、初音サンは娘の弟にからかわれて腹を立てる。翌日、一行は石器とホラ穴を見に出かけ、梅玉堂は断崖をよじ登る。ホラ穴の暗闇で、初音サンは彼との結婚を承知し、接吻を求める。宿へ戻ると、宿の祖母が現れ、孫娘は分裂症だから息子さんと縁組みしたいと持ちかける。この温泉は昔から精神を病んだ者が滝にうたれに来る場所だった。梅玉堂は急いで荷造りして退散するが、暗黒のホラ穴から美女を掘り当てたことに満足する。
登場人物
- 梅玉堂 東京の老舗菓子店の主人。五十三歳でふとっている
- 初音サン 三十歳の美しい未亡人。梅玉堂の見合い相手
- 一夫 梅玉堂の息子。大学三年生で、父の恋を後押しする
- オ花チャン 山の温泉宿の孫娘。滝の下で暮らす美しい娘
冒頭部(原文より)
梅玉堂は東京で古くから名のある菓子店である。その当主はよくふとっていたが、神経衰弱気味であった。見合をしたのが発病の元であった。 むろん初婚ではない。梅玉堂は五十三だ。死んだ先妻には大学生の倅をはじめ三人の子供が残されていた。 見合をした女の人も初婚ではなかった。初音サンという人だ。先夫が病死して、子がなかったから、生家に戻っていた。まだ三十であった。すこぶるの美人であった。
「発掘した美女」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
吊橋を渡り、急ぎに急いで谷底から上へ登る。登りつめて谷底の見えないところまで来ると、梅玉堂はようやく余裕がでた。 「すばらしい大自然よ」 彼は改めて大きな感動で一パイだった。そして考古学の方はダメだったが、暗黒のホラ穴から美女を発掘したことに至上の満足を覚えたのだ。
「発掘した美女」坂口安吾(青空文庫)
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