アプリで読む

無料・登録不要

花咲ける石(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

上州の剣豪の最期

  • 歴史

坂口安吾 1954年(昭和29年)8月 「週刊朝日別冊」

文字数
11,620字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 群馬県

この作品について

1954年(昭和29年)8月、「週刊朝日別冊」に発表された坂口安吾の時代小説。幕末に近い天保年間の上州(群馬県)の山間に伝わる剣術、法神流の達人、須田房吉(星野加賀之助)の生涯を、伝承を交えて描く。剣の腕は師の法神も認める天性のものでありながら、争いを好まない人物として語られる。江戸での他流試合から、故郷での決闘と最期までを、軽妙な語り口で追う。

あらすじ

群馬県の上越国境近い山間の利根郡では、幕末まで村々に剣術道場があった。追貝の里に楳本法神という山男が住みつき、法神流を開いた。高弟の須田房吉は、医者の子で、子供のころ山犬の喉を噛み切って殺した剛胆な人物である。千日の山ごもりを経て免許皆伝を得る。御家人の犬坂伴五郎らに呼ばれ、法神とともに江戸に出て、道場を掛け持ちして門弟をとり、押しかけた剣客を次々と打ち破った。夜道で十数人に襲われても無傷で帰り、江戸にあきて村へ戻る。故郷の庄屋、中沢伊之吉は、道場破りに行って房吉に負けたことを恨み、江戸の師、山崎孫七郎を呼び寄せ、鉄砲組も用意する。房吉は、仲裁も聞き入れられず、覚悟を決めて決闘の場へ向かう。山崎に肩を斬らせたものの、竹矢来を飛び越えた先が深田で、鉄砲に撃たれ、竹槍で突き殺されてしまう。四十二歳だった。のちに江戸の奉行所で相手方が罰せられ、御家人たちは「あの鬼神も人間だった」と驚いて流行歌に仕立てた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 群馬県の上越国境にちかい山間地帯を利根郡という。つまり利根川の上流だ。また一方は尾瀬沼の湿地帯にも連っている。  この利根郡というところは幕末まであらゆる村に剣術の道場があった。村といっても当時は今の字、もしくは部落に当るのがそれだから、山間の小さな部落という部落に例外なく道場があって、村々の男という男がみんな剣を使ったのである。

「花咲ける石」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

「なんしろ、お前、キンタマを小さくちぢめて腹の中へおさめてから、おもむろに立ち合いができたてえ人物だからな。竹矢来に手をかけたとたんに物の見事に五、六間も外の方へ跳びこしていたてえのだが、そこが深田とは因果の話じゃないか。しかし、なんだな。めっぽう強すぎても風情がない。房吉も斬り殺されて花を添えたというものだ。石に花を咲かせたな。ヤ、これもまた近来の佳話だわさ」  伴五郎らはこんなことをいって手向けの酒をのんだが、房吉の剣をなつかしみ、死をいたんで、角の師匠にたのみ、意気な流行歌に仕立ててもらって唄った。そしてこれが当時八百八町に大流行したということである。

「花咲ける石」坂口安吾(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品