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春の枯葉(太宰治)のあらすじ・登場人物

雪解けにあらわれた春の枯葉

  • 家族
  • 心理

太宰治 1946年(昭和21年)9月 「人間」

文字数
23,845字
読了目安
約48分
表記
新字新仮名
舞台
  • 青森県

この作品について

太宰治が1946(昭和21)年に発表した三場の戯曲。敗戦の翌春、津軽半島の海辺の村の国民学校を舞台に、教師の野中弥一と、養子に入った家の妻節子と義母、疎開してきて間借りする奥田兄妹の関係を描く。題は、雪が消えたあとに姿を現す去年の枯葉に、役に立たない自分たちを重ねた野中の台詞による。

あらすじ

昭和二十一年の四月、津軽半島の海辺の村。国民学校の教師、野中弥一は、黒板に「滅亡か独立か」などと書き散らし、生徒たちが「春高楼の花の宴」を口ずさむのを聞いて、淋しさを覚える。野中の家には、東京から疎開してきた奥田義雄、菊代の兄妹が間借りしている。派手な着物の菊代は、野中に新円を詰めた封筒を渡し、田舎の人間はお金でしか人を測らないと毒づき、奥さんに渡してくれと言って立ち去る。野中の家は家付き娘の妻節子とその母しづが切り盛りし、養子の野中は肩身が狭い。夕方、野中は漁師にもらった「サントリーウイスキー」と平目を持って泥酔して帰り、節子たちが肴に手をつけないことに腹を立てて食卓をひっくり返す。そこへ菊代が警察に挙げられたという知らせが来て、奥田が走り、野中も妻とあとを追うが、それは菊代の悪戯だった。月夜の浜で、野中は節子が奥田の部屋にいたことを疑い、妻の強さをなじって砂の上に眠り込む。節子は、なぜ皆が自分をいじめるのかと奥田に訴え、奥田は一家で出て行くと告げる。遠くから学童たちの合唱が聞こえるなか、節子が夫を起こそうとすると、野中はすでに息絶えていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

(野中)(蒼ざめた顔に無理に微笑を浮べ)何も、叱るんじゃないのだ。なんだいお前は、もう高等科二年にもなったくせに、そんなに泣いて、みっともないぞ。さあ、ちゃんと、涙を拭け。(野中自身の腰にさげてあるタオルを、学童に手渡す) (学童)(素直にタオルで涙を拭く) (野中)(そのタオルを学童から取って、また自分の腰にさげ)よし、さあ歌ってごらん。叱りやしない。決して叱らないから、いまお前たちが、あの、外のグランドで一緒に歌っていた唱歌を、ここで歌ってごらん。低い声でかまわないから、歌ってごらん。叱るんじゃないんだよ。先生は、あの歌を、ところどころ忘れたのでね、お前からいま教えてもらおうと思っているのだ。それだけなんだから、安心して、さあ、ひとつ男らしく、歌って聞かせてくれ。(言いながら、最前列の学童用の椅子に腰をおろす。つまり観客に対しては、うしろ向きになる) 学童は、観客に対して正面を向き、気を附けの姿勢を執り、眼をつぶって、低く歌う。

「春の枯葉」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

(節子)(奥田を見送り、それから、しゃがんで野中の肩をゆすぶる)もし、もし。風邪をひきますよ。さ、一緒に帰りましょうね。(野中の手をとり)まあ、こんなに冷くなって。すみませんでしたわね。わたくしが悪かったのよ。あなた、どうなさったの? (顔を近寄せる)あなた! (狂乱の如く野中の顔、胸、脚など撫でまわし)もし、あなた! (突然立ち上って上手に走り)奥田先生! 奥田せんせい! (また馳せかえり、野中の死体に武者振りついて泣く)すみません、すみません。あなた、もういちど眼をあいて。わたくしは、心をいれかえたのよ。これからはお酒のお相手でも何でもしようと思っていましたのに、あなた! (号泣する) 風。枯葉。歌声。 ――幕。

「春の枯葉」太宰治(青空文庫)

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