生玉心中(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
隠した恋が、生玉で終わる
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 19,952字
- 読了目安
- 約40分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 大阪府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。1715年(正徳5年)に初演された世話物で、上・中・下の三巻から成る。正式な外題は「嘉平次おさが 生玉心中」。大坂・道頓堀の茶碗屋「一つ屋」の息子の嘉平次と、伏見坂町の茶屋・柏屋の遊女おさがの心中を描く。二人は深く思い合っているが、父の五兵衞は、従妹のおきはを嘉平次の嫁に迎える約束を決めており、遊女のおさがとの仲は、親にも世間にも許されない。そのうえ嘉平次は、品物の代金をめぐって印伝屋の長作と争い、金にも詰まっていく。天満の社内の茶屋で隠れて会った二人は、桐油をかけた駕籠の中へ身をひそめ、通りかかった姉と弟の目を逃れようとする。父には、おきはとの祝言を迫られる。逃げ場を失った二人は、夜の道を歩いて生玉へ向かい、茶店で心中を遂げる。市井の男女の恋と、親や世間への義理に挟まれた若者の弱さを、道行の哀れさとともに描く。本書は「近代日本文学大系」第7巻(国民図書、1928年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上巻】五月の節句の前、天満の社内の茶屋「清水屋」。伏見坂町の遊女おさがは、客の大和の一見客をもてなしながら、編笠で訪れた茶碗屋の嘉平次と二日ぶりに言葉を交わす。嘉平次は父の家へ帰れぬ首尾を嘆き、おさがは、夫婦になる日まで辛抱してほしいと言い、父に認められるよう頼む。そこへ、嘉平次の姉と弟の幾松が通りかかり、二人は桐油の駕籠に身をひそめる。姉は駕籠の中の嘉平次に気づき、親の嘆きと許婚のおきはの不憫を、聞こえよがしに口にする。続いて、印伝屋の長作が、嘉平次の品物代の十六両をめぐって現れ、おさがに言い寄る。駕籠から出た嘉平次は長作と取っ組み合い、喧嘩の騒ぎになって、長作は逃げ去る。【中之巻】二人は嘉平次の出店に入るが、そこへ戸を叩いて父の五兵衞が現れ、二人は窓の貫に帯を結んでぶら下がり、身を隠す。父は養い娘のおきはを連れている。父は嘉平次に、おきはと夫婦になるよう迫り、嘉平次は、その場では従うと答える。父は祝言のしるしとして脇差を渡し、酒を酌んで帰る。やがて、長作が手形の金を取り立てに来て、嘉平次は長作を打ちのめす。紺屋の若い者たちに戸口を固められ、二人は死ぬ覚悟を決める。【下之巻】二人は念仏を唱えながら、夜の道を生玉へ向かう。途中で、柏屋の親方の半兵衞と、おさがの妹分の遊女小辨が二人を探しているのに出会うが、葭簀に隠れて見つからずに済む。夜明け前、馬場先の茶店で、二人は互いの親のことを語って泣き、嘉平次は脇差でおさがを刺し、続いて自分も命を絶つ。
登場人物
- 嘉平次 道頓堀の茶碗屋「一つ屋」の息子。おさがと深く思い合っている
- おさが 伏見坂町の茶屋、柏屋の遊女
- 五兵衞 嘉平次の父。「一つ屋」の主人
- おきは 嘉平次の従妹で許婚
- 幾松 嘉平次の弟
- 長作 印伝屋の主人。嘉平次と手形をめぐって争う
- 半兵衞 柏屋の親方
- 小辨 柏屋の遊女。おさがの妹分
冒頭部(原文より)
次第今に伝へて老松の、今に伝へて老松の、変らぬ色を頼まん。その松が枝の宮柱、今に栄えて数万人、心々の願立に、神の御身さへア、いそもじの、まして流れの憂き節や、日毎に替る身の勤め。
「生玉心中」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
惜しや五日の花菖蒲、花の体を血に染めて、恋の刃に伏見坂の、世語とこそなりにけり。
「生玉心中」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第7巻 近松門左衛門集 下(国民図書、1928年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・巻の題の脇の副題・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。