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南瓜(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

冗談しか言えない男の凶行

  • 心理

芥川龍之介 1918年(大正7年)2月

文字数
2,840字
読了目安
約6分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

吉原の下っ端の太鼓持ち「南瓜」の市兵衛が、客を刺し殺した事件を、事情を知る男が友人に語って聞かせる江戸前の口語の短編。何を言っても冗談にしか取ってもらえない男の悲しみが、シェイクスピア「ハムレット」の台詞とともに爆発する。語り口の軽妙さと、結びの一言の苦みが対をなす。末尾に大正七年二月とある。

あらすじ

南瓜が人を殺したと聞いて驚く友人に、語り手はあいつは綽名で、吉原では数にも入らない太鼓持ちの市兵衛だと説明する。頭でっかちの小男で、フロックに緋天鵞絨のチョッキ、頭には由兵衛奴の髷を乗せ、洒落ばかり言っていた。ところが本当は神経質で、真面目なことを言っても客は冗談としか受け取らず、それが気に障り出していた。市兵衛は薄雲太夫に惚れていたが、誰も本気にせず、成金の奈良茂も同じ太夫に惚れていた。ある晩、酔った市兵衛が太夫に夫婦になってくれと迫ると、「命がけで惚れなまし」と冗談で返され、奈良茂まで「今が今でも命のやりとりしてこまそ」と笑った。すると市兵衛は急に血相を変え、英語でハムレットの台詞を言い出す。アメリカ帰りの奈良茂が洒落でポローニアスの声色を使うと、市兵衛は「鼠か」の台詞とともに脇差で奈良茂の胸を刺し、客は絶命した。捕らえられて引き立てられる市兵衛は、薄雲太夫の鳳凰の刺繍の仕掛けを羽織っていたという。語り手は、何でも冗談だと思うのは危険だと結ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

 何しろ南瓜が人を殺す世の中なんだから、驚くよ。どう見たつて、あいつがそんな大それた真似をしようなんぞとは思はれないぢやないか。なにほんものの南瓜か? 冗談云つちやいけない。南瓜は綽号だよ。南瓜の市兵衛と云つてね。吉原ぢや下つぱの――と云ふよりや、まるで数にはいつてゐない太鼓持なんだ。

「南瓜」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それ以来吉原は、今でもあいつの噂で持ちきつてゐるやうだ。兎に角これで見ても、何でも冗談だと思ふのは危険だよ。笑つて云つたつて、云はなくつたつて、真面目な事はやつぱり真面目な事にちがひないからね。

「南瓜」芥川龍之介(青空文庫)

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