開化の良人(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
愛ある結婚を信じた紳士
- 恋愛
- 歴史
- 文字数
- 16,417字
- 読了目安
- 約33分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
芥川龍之介の「開化物」の短編。上野の博物館で明治初期の展覧会を見ていた「私」が、老紳士の本多子爵から、若いころの友人・三浦直樹の結婚生活の話を聞く枠物語である。愛のある結婚を信条にした理想家肌の三浦と、才気のある美しい妻との間に何が起きたのかが、聞き手の問いかけを挟みながら語られる。「中外」1919(大正8)年2月号に発表。
あらすじ
上野の博物館の展覧会で、「私」は本多子爵に出会い、友人だった三浦直樹の話を聞くことになる。三浦は子爵がフランスから帰る船で知り合った資産家で、愛のない結婚はしないと言い続けていたが、萩寺で見染めた藤井の娘・勝美と結婚し、快活な人間に変わった。しかし子爵が朝鮮から帰ると、三浦は以前より幽鬱になっていた。勝美は才気のある美しい女で、子爵が新富座で見かけたとき、縞の背広の男に会釈を送っていた。男は勝美の従弟で、三浦の屋敷で子爵に紹介される。新聞記者から女権論者の楢山夫人の醜聞を聞いた子爵は、二人の関係を疑う。十六夜の夜、子爵が三浦と猪牙舟で大川に漕ぎ出すと、三浦は一週間前に勝美と離縁したと打ち明け、妻と従弟の関係を知りながら黙認していた理由を語りはじめる。
冒頭部(原文より)
いつぞや上野の博物館で、明治初期の文明に関する展覧会が開かれていた時の事である。ある曇った日の午後、私はその展覧会の各室を一々叮嚀に見て歩いて、ようやく当時の版画が陳列されている、最後の一室へはいった時、そこの硝子戸棚の前へ立って、古ぼけた何枚かの銅版画を眺めている一人の紳士が眼にはいった。紳士は背のすらっとした、どこか花車な所のある老人で、折目の正しい黒ずくめの洋服に、上品な山高帽をかぶっていた。
「開化の良人」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
私『そうだ。やはり子供の夢だったかも知れない。が、今日我々の目標にしている開化も、百年の後になって見たら、やはり同じ子供の夢だろうじゃないか。……』」 丁度本多子爵がここまで語り続けた時、我々はいつか側へ来た守衛の口から、閉館の時刻がすでに迫っていると云う事を伝えられた。子爵と私とは徐に立上って、もう一度周囲の浮世絵と銅版画とを見渡してから、そっとこのうす暗い陳列室の外へ出た。まるで我々自身も、あの硝子戸棚から浮び出た過去の幽霊か何かのように。
「開化の良人」芥川龍之介(青空文庫)
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