アプリで読む

無料・登録不要

日輪(横光利一)のあらすじ・登場人物

卑弥呼をめぐる王たちの野望

  • 歴史
  • 恋愛

横光利一 1923年(大正12年)5月 「新小説」

文字数
47,982字
読了目安
約1時間36分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

横光利一が1923年(大正12年)、「新小説」に発表した中編小説。同年発表の「蠅」とともに横光の実質的な出世作となった。邪馬台国の時代の古代日本を舞台に、奴国に生まれた絶世の美女・卑弥呼をめぐって、諸国の王たちが欲望と野望をぶつけ合う。絢爛な語彙と鮮烈な色彩感覚、大胆な比喩を駆使した文体は、のちの新感覚派の登場を予告するものであり、歴史に材を取りながらも神話的な迫力に満ちた青年横光の野心作である。

あらすじ

古代、邪馬台国の時代の日本。有明の入江のほとりに、奴国と、勢いを増す耶馬台国とが向かい合っている。奴国に生まれた絶世の美女・卑弥呼は、その輝くばかりの美貌ゆえに、諸国の王たちの欲望と争いの渦の中心に据えられる。彼女を手に入れようとする王や、隣国の若者らの野望と情念が激しくぶつかり合い、権謀と裏切り、略奪と戦がくり返される。愛と憎しみ、支配欲に翻弄されながら、卑弥呼もまた数奇な運命の糸に絡めとられていく。やがて奴国と耶馬台の全面衝突のなかで、卑弥呼は自らをめぐる愛憎のもつれから、自分を慕った長羅を皮肉にも死なせてしまい、その亡骸にすがって泣き崩れる。押し寄せる耶馬台の軍の鬨の声が空にとどろくなか、物語は閉じられる。古代日本を舞台に、王たちの欲望と一人の女の宿命を、絢爛な文体と鮮烈な色彩感覚で描いた本作は、青年横光の才気を早くも示し、のちの新感覚派へとつながる出世作となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

序章  乙女たちの一団は水甕を頭に載せて、小丘の中腹にある泉の傍から、唄いながら合歓木の林の中に隠れて行った。後の泉を包んだ岩の上には、まだ凋れぬ太藺の花が、水甕の破片とともに踏みにじられて残っていた。そうして、西に傾きかかった太陽は、この小丘の裾遠く拡った有明の入江の上に、長く曲折しつつ水平線の両端に消え入る白い砂丘の上に、今は力なくその光を投げていた。

「日輪」横光利一(青空文庫)

末尾部(原文より)

 卑弥呼は頭をかかえると剣の上へ泣き崩れた。 「大兄よ、大兄よ、我を赦せ。我は爾のために長羅を撃った。我は爾のために復讐した。ああ、長羅よ長羅よ、我を赦せ。爾は我のために殺された。」  長羅と反絵と卑弥呼を残して、彼方の森の中では、奴国の兵を追いながら、奴国の方へ押し寄せて行く耶馬台の軍の鯨波の声が一段と空に上った。

「日輪」横光利一(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品