アプリで読む

無料・登録不要

過酸化マンガン水の夢(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物

日記が流れ込む残酷な夢

  • 心理

谷崎潤一郎 1955年(昭和30年)11月 「中央公論」

文字数
12,135字
読了目安
約24分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 静岡県
  • 東京都

この作品について

日記の体裁で書かれた晩年の異色作。1955年(昭和30年)11月、雑誌「中央公論」に発表された。熱海に住む「予」が上京し、ストリップとフランス映画「悪魔のような女」を見物して京料理を食べ、また熱海へ帰る二日間を克明に書き留める。ところが夜半、半醒半睡のうちに映画の残像と食べ物と排泄物とが混じり合い、やがて史記に伝わる「人彘」の故事へ流れ込んでいく。老年の日常のただなかに残酷が浮かび上がる一篇。

あらすじ

八月八日、高血圧が快方に向かった「予」は、家人らを連れて熱海から上京する。かねてせがまれていた日劇のミュージックホールでストリップを見物し、浴槽の場に出た春川ますみという娘の肉体に目を惹かれた。翌日は日比谷で評判のフランス映画「悪魔のような女」を見る。校長の妻と情婦が共謀して夫を浴槽で溺れさせ、プールへ沈めるが、その死体が消えてしまう——予はその趣向をこまかく検討し、不自然を数え上げる。夜、熱海に帰って就寝したものの、過食のため腹が張って眠れない。睡眠剤を服むうちに、鱧の葛餡、入浴する娘、浴槽の死人の眼球、そして自分の便器の紅い溶液が次々に重なり合い、やがて予は漢の孝恵帝となって、あるものを見せられるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

八月八日朝いでゆにて上京。予、家人、珠子さん、フジの四人なり。七月中は近年稀なる炎暑つゞきのところ本月四日夜おそく久し振に降雨を見、華氏にて九度程低下大いに凌ぎよくなったので、もう大丈夫と思ったのに今朝は又暑さブリ返したり。昨夜既にいでゆの切符を買って置いたので暑熱を冒し出かける。

「過酸化マンガン水の夢」谷崎潤一郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「あッ、この人は戚夫人ですね」と云って予は思わず眼を蔽う。予は予の傍にいる貴夫人が呂太后であり、予自身は孝恵帝であることを知る。………ふと眼が覚めると午前四時半で障子の外が薄明るくなっている。山上の興亜観音の太鼓の音が聞えつゝある。予の腹はまだ張っていて苦しい。家人はいつの間にか安らかに眠っている。予がほんとうの夢に這入ったのはどの辺からであったろうか。シモーン・シニョレの風貌が歪んで崩れ出したあたりからであろうか。………予はそんなことを考えながら再び睡り始めた。

「過酸化マンガン水の夢」谷崎潤一郎(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品