片恋(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
写真に惚れたという話
- 恋愛
- 心理
- 文字数
- 4,506字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
京浜電車のなかで、大学時代の友人から聞かされた話という体裁の短編。出張先の宴席で、かつてよく通った店の女中・お徳が芸者になっているのに出会う。昔は仲間の一人に岡惚れしていたはずの女が、いま語る恋の相手は——泣き笑いをしながら真剣に語るその姿を、聞き手はヒステリイかもしれないと訝る。新橋に電車が着くまでの短い時間に収められた、青春の後日譚。
あらすじ
一緒に大学を出た親しい友だちの一人に、ある夏の午後、京浜電車の中で遇ったら、こんな話を聞かせられた——という枠から物語は始まる。この間、社の用でYへ行ったとき、向うで宴会を開いて招待してくれた。床の間には石版摺りの乃木大将の掛物、その前に造花の牡丹という体裁だが、雨が降ったのと人数が少なかったのとで、思ったより感じがよかった。ところがお酌人の中に——昔よく飲みに行ったUの女中、お徳がいたのである。鼻の低い、額のつまった、あすこ中での茶目だった女が、お座敷着で銚子を持ち、朋輩なみに乙につんとすましている。もの言うたびに顋をしゃくる癖も昔のままだった。……語り手は無常を感じる。あれでも元は志村の岡惚れだったのだ。志村は大真面目でペパミントの小さな罎を買ってきては「甘いから飲んでごらん」とやったものだった。やがて話はお徳自身が語る恋へと移ってゆく。泣き笑いをしながら、いや味でも言うような調子で語るその様子に、聞き手は「あいつは悪くすると、ヒステリイだぜ」と評しつつ、いやに真剣なところがあったと振り返る。事によると写真に惚れたというのは作り話で、ほんとうは誰か我々の連中に片恋をしたことがあるのかもしれない——そう語り終えたとき、二人の乗った電車は薄暮の新橋停車場へ着いた。
登場人物
- 友だち Yの宴席でお徳に再会した男
- お徳 昔Uの女中だった、茶目な女。いまは芸者
- 志村 学生時代にお徳から岡惚れされていた仲間
冒頭部(原文より)
(一しょに大学を出た親しい友だちの一人に、ある夏の午後京浜電車の中で遇ったら、こんな話を聞かせられた。) この間、社の用でYへ行った時の話だ。向うで宴会を開いて、僕を招待してくれた事がある。
「片恋」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
だが、ヒステリイにしても、いやに真剣な所があったっけ。事によると、写真に惚れたと云うのは作り話で、ほんとうは誰か我々の連中に片恋をした事があるのかも知れない。 (二人の乗っていた電車は、この時、薄暮の新橋停車場へ着いた。)
「片恋」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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