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日本橋(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

姉の面影を追う男と二人の芸者

  • 恋愛
  • 心理

泉鏡花 1914年(大正3年)9月 「書き下ろし」

文字数
88,798字
読了目安
約2時間58分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

明治末の日本橋の花柳界を舞台にした長編。1914年(大正3年)9月、千章館から書き下ろしで刊行された。生き別れた姉の面影を追う医学士と、対照的な二人の芸者——義理堅い清葉と、意地から男を引き受けたお孝——の思いが激しく絡み合う。鏡花自身の手で新派のために戯曲化され、以後たびたび舞台化・映画化された代表作の一つ。

あらすじ

雛の節句の翌夜、一石橋の上から栄螺と蛤を川へ放つ男があった。幼い日に貧しさゆえ生き別れた姉の志を継ぐ、医学士・葛木晋三である。不審を抱いた巡査に咎められるところを、通りかかった稲葉家の芸者お孝がとりなした。葛木が七年ものあいだ想いつづけてきたのは、渾名を令夫人と呼ばれる滝の家の清葉。だが旦那への義理を立てる清葉は、その想いを受けようとしない。清葉への負けん気から葛木を引き受けたお孝は、やがて本気で彼を恋うようになる。お孝に執着する熊の皮の大男・五十嵐伝吾が影のようにつきまとい、半玉のお千世が二人の女のあいだを行き来する。葛木がにわかに僧形となって姿を消したのち、狂気じみた伝吾は刃を手に、火事の夜の町へ踏み込んでいく。

登場人物

冒頭部(原文より)

「お客に舐めさせるんだとよ。」 「何を。」 「その飴をよ。」  腕白ものの十ウ九ツ、十一二なのを頭に七八人。春の日永に生欠伸で鼻の下を伸している、四辻の飴屋の前に、押競饅頭で集った。手に手に紅だの、萌黄だの、紫だの、彩った螺貝の独楽。日本橋に手の届く、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎の立つ長閑さに、彩色した貝は一枚々々、甘い蜂、香しき蝶になって舞いそうなのに、ブンブンと唸るは虻よ、口々に喧しい。

「日本橋」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

「姉さん、遺言を聞いて下さいな。」 「生命に掛けます、お孝さん。」  その時、舞扇を開いた面は、銀よりも白ずんだ。  お千世は玉の緒を繋ぎとめた。  葛木が、生理学教室に帰ったのは言うまでもない。留学して当時独逸にあり。  滝の家は、建つれば建てられた家を、わざと稲葉家のあとに引移った。一家の美人十三人。  清葉が盃を挙げて唄う、あれ聞け横笛を。 ――露地の細路駒下駄で――

「日本橋」泉鏡花(青空文庫)

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