第二菎蒻本(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
雪の夜に訪れた緋の襦袢
- 恋愛
- 心理
- 文字数
- 15,740字
- 読了目安
- 約31分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
1914年(大正3年)1月に雑誌『新日本』に発表された短編。題名は「菎蒻本」に続く作品であることを示す。雪の降る夜、牛込矢来の二階で俊吉を待っていたのは、緋縮緬の長襦袢姿の女・お染だった。去年の夏の浅草での再会と、茶をこぼして着物を汚した出来事が回想され、雪の夜の逢瀬へと重なっていく。遊女上がりの女の哀しさと、恋しさを緋色の印象で描く。
あらすじ
雪の夜、牛込矢来の自宅から離れた友人宅の運座に出ていた俊吉のもとへ、女中が、深川から宮本と名乗る女が真っ赤な襦袢に跣足で訪ねて来たと知らせに来る。俊吉は雪の中を帰りながら、去年の夏の出来事を思い出す。遊女上がりで、千葉から洲崎へ流れ、いまは浅草で芸妓に出ているお染(染次)。八月の末、雨宿りの帰りに蔦屋を訪ねた俊吉は、お染と三年ぶりに会う。ところが待合で出された茶をお染が膝にこぼし、着ていた明石の羅を汚してしまい、別れ際に「お近いうちに」と言われながら、俊吉はそのまま訪ねられずにいた。秋に伊香保から短い便りが届いたきりである。家へ戻ると、二階の炬燵に緋縮緬の長襦袢のお染が待っていた。二人は酒を酌み交わす。お染は伊香保で旦那に折檻され、短刀で斬られたと語って胸を開く。手巾に血が溢れる。仏壇のりんが鳴って俊吉が顔を上げると、そこには誰もいない。階下で祖母は、夢に美しい女が現れて回向を頼んだと言う。
登場人物
- 俊吉 矢来の二階に住む二十七歳の男。祖母と暮らす
- お染(染次) 遊女上がりの芸妓。緋の長襦袢の女
- 祖母 俊吉と暮らす老女。仏壇に経をあげる
- 待合の女房 お染の抱え主に近い立場の女
冒頭部(原文より)
雪の夜路の、人影もない真白な中を、矢来の奥の男世帯へ出先から帰った目に、狭い二階の六畳敷、机の傍なる置炬燵に、肩まで入って待っていたのが、するりと起直った、逢いに来た婦の一重々々、燃立つような長襦袢ばかりだった姿は、思い懸けずもまた類なく美しいものであった。
「第二菎蒻本」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
新聞の電報と、続いて掲げられた上州の記事は、ここには言うまい。俊吉は年紀二十七。
「第二菎蒻本」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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