金将軍(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
伝説と歴史を笑う一編
- 歴史
- 文字数
- 2,700字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
朝鮮に伝わる小西行長の最期の伝説を、芥川竜之介が短くまとめた作品。僧に身をやつした加藤清正と小西行長が朝鮮を探る場面から始まり、妓生桂月香と金応瑞が行長を討つ顛末が語られる。末尾では、日本書紀の白村江の記事を引き、歴史が国民に栄光あるものとして語られることを皮肉る。
あらすじ
ある夏の日、僧に身をやつした加藤清正と小西行長は、朝鮮の田舎道で、石を枕にして頭を宙に浮かせたまま眠る童児を見つける。清正は殺そうとするが、行長は止める。三十年後、日本軍が朝鮮に攻め込み、国が危うくなったとき、あの童児は金応瑞となって宣祖王のもとへ駆けつけ、倭将を討つと誓う。平壌では、行長が妓生桂月香を寵愛していたが、彼女は国を憂え、金応瑞を兄と偽って引き入れる。眠り薬で眠らせた行長の首を金応瑞が斬ると、首は体へ戻ろうとし、桂月香が灰を投げて阻む。首のない体が投げた剣は金応瑞の足の小指を斬り落とす。夜明け前、金応瑞は桂月香が行長の子を宿していることを思い出し、母子を殺す。血塊となった子は「もう三月待てば、父の仇をとってやるものを」と叫ぶ。語り手は、これは朝鮮に伝わる行長の最期にすぎないと述べ、日本の歴史教科書も敗戦の記事を載せないではないかと、日本書紀の白村江の記事を引く。いかなる国の歴史もその国民には栄光ある歴史だと結ぶ。
登場人物
- 金応瑞 朝鮮を救う童児
- 加藤清正 日本の武将
- 小西行長 日本の武将
- 桂月香 行長に仕える妓生
- 宣祖王 朝鮮の王
冒頭部(原文より)
ある夏の日、笠をかぶった僧が二人、朝鮮平安南道竜岡郡桐隅里の田舎道を歩いていた。この二人はただの雲水ではない。実ははるばる日本から朝鮮の国を探りに来た加藤肥後守清正と小西摂津守行長とである。 二人はあたりを眺めながら、青田の間を歩いて行った。するとたちまち道ばたに農夫の子らしい童児が一人、円い石を枕にしたまま、すやすや寝ているのを発見した。加藤清正は笠の下から、じっとその童児へ目を落した。 「この小倅は異相をしている。」
「金将軍」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
いかなる国の歴史もその国民には必ず栄光ある歴史である。何も金将軍の伝説ばかり一粲に価する次第ではない。
「金将軍」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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