煙管(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
金無垢の煙管の皮肉
- 風刺
- 歴史
- 文字数
- 6,467字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
加賀百万石の藩主前田斉広が登城に持参する金無垢の煙管と、それをねだる河内山宗俊らお数寄屋坊主をめぐる短編。煙管の地金をめぐって藩の重役たちが対策を重ねる顛末を、皮肉のきいた語り口で描く。藩主の虚栄心と坊主たちの欲を、煙管という小道具で見せる。
あらすじ
加賀藩主前田斉広は、江戸城へ金無垢の煙管を持参するのを得意にしていた。ある日、お数寄屋坊主の河内山宗俊が「拝領したい」と願い出ると、斉広は体面から煙管を与えてしまう。家臣の山崎・岩田・上木の三人は、登城のたびに坊主に取られては藩の損失になると考え、煙管の地金を銀に変える。ところが坊主たちは、金より与えやすいと見たのか、かえって先を争って拝領に出てくる。そこで斉広は、銀の煙管でもうるさいから金に戻せと命じる。重役たちは真鍮の煙管を金と偽って斉広に持たせる。宗俊は仲間の了哲に「あれは金無垢だ」と言い、ひとり斉広のもとへ行って煙管を貰うと、了哲に投げつける。それは真鍮だった。坊主たちは、斉広の煙管が真鍮だと知って、ねだることをやめる。重役たちは改めて金無垢の煙管を作らせるが、斉広が持参すると誰も拝領に来ない。不安になった斉広が宗俊に「煙管をとらそうか」と声をかけると、宗俊は「以前に頂いております」と丁重に断る。斉広は百万石の勢力が煙のように消える気がする。前田家では以後、煙管は真鍮のものを用いたという。
登場人物
- 前田斉広 加賀藩主
- 河内山宗俊 お数寄屋坊主
- 了哲 坊主仲間
- 山崎勘左衛門・岩田内蔵之助・上木九郎右衛門 藩の重役
冒頭部(原文より)
加州石川郡金沢城の城主、前田斉広は、参覲中、江戸城の本丸へ登城する毎に、必ず愛用の煙管を持って行った。当時有名な煙管商、住吉屋七兵衛の手に成った、金無垢地に、剣梅鉢の紋ぢらしと云う、数寄を凝らした煙管である。
「煙管」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
古老の伝える所によると、前田家では斉広以後、斉泰も、慶寧も、煙管は皆真鍮のものを用いたそうである、事によると、これは、金無垢の煙管に懲りた斉広が、子孫に遺誡でも垂れた結果かも知れない。
「煙管」芥川龍之介(青空文庫)
名文
加州石川郡金沢城の城主、前田斉広は、参覲中、江戸城の本丸へ登城する毎に、必ず愛用の煙管を持って行った。
冒頭の一文。加賀百万石の殿様が自慢にした金無垢の煙管が、江戸城の坊主たちとのやりとりを生む発端となる。
原文を読む
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