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入婿十万両(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

愚か者を装う入婿の企み

  • 歴史
  • 風刺

山本周五郎 1936年(昭和11年)11月 「婦人倶楽部」

文字数
10,641字
読了目安
約21分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

山本周五郎が1936年(昭和11年)、「婦人倶楽部」に発表した時代小説。矢走家に入婿した浅二郎は、家中の若い者と悪さばかりして愚か者を装っているが、その振る舞いの陰には、深い企みが隠されていた。夫婦の情と、人を食った痛快さを描いた、山本の一編である。

あらすじ

「今日もまた家中の若い奴等が何か悪さをしたそうではないか」——矢走源兵衛は、茶を啜りながら柔和な眼で婿の浅二郎を見る。矢走家に入婿した浅二郎は、家中の若い者たちと悪さばかりして、愚か者のように振る舞っていた。だが、その一見だらしない振る舞いの陰には、じつは深い思惑が隠されていたのだ。物語は、この浅二郎の企みと、彼と妻・不由をめぐる夫婦の情を、軽妙に描いていく。物語の結び、半月も前から夫の帰りを待っていた不由が、「これからは良い妻になりまする、どうぞお見捨て遊ばさずに」とすがると、浅二郎もさすがに心を動かされ、思わず妻の肩へ手を回す。その様子を襖の陰からうかがっていた源兵衛は、感悦の声を抑え、足音を忍ばせてそっと立ち去る。「もう殿の御意を急いで伝えるにも及ぶまい、浅二郎は間違いなくこっちのものじゃ……」と呟きながら。愚か者を装う入婿の痛快な企みと、夫婦の情を描いた、山本の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

「――浅二郎」 「はい」 「今日もまた家中の若い奴等が何か悪さをしたそうではないか」  矢走源兵衛は茶を啜りながら柔和な眼をあげて婿を見た。

「入婿十万両」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「不由は半月もまえから、貴方様のお閨を守って、淋しくお帰りを待っておりました。これからは良い妻になりまする、どうぞお見捨て遊ばさずに」 「――不由どの」  浅二郎もさすがに心を動かされたか、思わず妻の、――さよう、今こそ明らかに妻の――肩へ手を廻した。  源兵衛は感悦の声を抑え、跫音を忍ばせて、そっとそこを離れていった。――もう殿の御意を急いで伝えるにも及ぶまい、浅二郎は間違いなくこっちのものじゃ……と呟きながら。

「入婿十万両」山本周五郎(青空文庫)

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