孤独地獄(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
孤独地獄を語る僧
- 心理
- 文字数
- 2,618字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
母から聞いた大叔父・津藤(細木香以)の話を、「自分」の語りで綴る芥川竜之介の初期の短編。吉原の玉屋で出会った禅僧が語る仏説の「孤独地獄」を軸に、語り手が自身の心情を重ねて結ぶ。「新思潮」に掲載された。
あらすじ
語り手は、母から聞いた大叔父の話を記す。幕末の大通として知られた津藤こと細木香以は、吉原の玉屋で、医者と称する禅僧禅超と知り合う。二人は酒色の話から親しくなり、ある日、禅超は「孤独地獄」という仏説を語る。孤独地獄は山間や空中にも忽然と現れ、目の前の境界がそのまま地獄の苦しみになるという。自分は二、三年前からこの地獄へ堕ち、何ごとにも長く続く興味を持てず、境界を追って生きていると言い、しまいには死ぬほかないと言いかける。それきり禅超は玉屋へ来なくなり、行方を知る者はいない。後年、零落した津藤の机上には、禅超が錦木のもとへ忘れた『金剛経』の疏抄があった。語り手は、自分もまた孤独地獄に苦しめられている一人だと述べて結ぶ。
登場人物
- 津藤(細木香以) 幕末の大通
- 禅超 吉原に通う禅僧
- 錦木 禅超が馴染む玉屋の華魁
冒頭部(原文より)
この話を自分は母から聞いた。母はそれを自分の大叔父から聞いたと云つてゐる。話の真偽は知らない。唯大叔父自身の性行から推して、かう云ふ事も随分ありさうだと思ふだけである。
「孤独地獄」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
一日の大部分を書斎で暮してゐる自分は、生活の上から云つて、自分の大叔父やこの禅僧とは、全然没交渉な世界に住んでゐる人間である。又興味の上から云つても、自分は徳川時代の戯作や浮世絵に、特殊な興味を持つてゐる者ではない。しかも自分の中にある或心もちは、動もすれば孤独地獄と云ふ語を介して、自分の同情を彼等の生活に注がうとする。が、自分はそれを否まうとは思はない。何故と云へば、或意味で自分も亦、孤独地獄に苦しめられてゐる一人だからである。
「孤独地獄」芥川龍之介(青空文庫)
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