アプリで読む

無料・登録不要

紅玉(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

烏が見守る酔い画工の夜

  • 幻想

泉鏡花 1913年(大正2年)

文字数
11,657字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名

この作品について

末尾に大正2年(1913年)7月と記された戯曲。初冬の郊外の原野を舞台に、展覧会に落選した画工、烏の扮装をした侍女、嫉妬する老紳士、貴夫人と若い紳士、人間の色恋を高みから眺める三羽の烏、子どもたちの輪唄が交錯する。紅玉の指環を烏が奪った出来事を発端に、不倫と嫉妬の色を、現実とも夢ともつかない舞台の上で描く。鏡花の戯曲のなかでも、幻想と諧謔が強い一作。

あらすじ

初冬の夕暮れ、郊外の原野。展覧会で落選し、絹地の絵を背負って酔って帰る画工は、子どもたちに凧に見立てられて遊ばれ、輪唄にあわせて踊らされるうちに眠り込む。そこへ烏の扮装をした侍女が現れ、三羽の烏とともに、天幕と卓子の宴席をしつらえる。侍女は、園遊会で好評だった烏の扮装で野に出て、通る人を驚かす遊びを重ねていた。そこへ現れた老紳士は、旅行に出たと見せかけて妻と若い紳士の不貞を探っており、侍女を問い詰める。侍女は、烏が貴夫人の紅玉の指環を奪い、塀の外の男が拾ったことから、夫人がその男と会うことになった経緯を語る。老紳士が去ったあと、三羽の烏は人間の恋の行方を見物しながら、その果てを待つ話をする。薄の彼方には貴夫人と若い紳士の姿がかすかに浮かぶ。目覚めた画工は野火を放ち、絹地に三羽の烏が現れる。

登場人物

冒頭部(原文より)

小児一 やあ、停車場の方の、遠くの方から、あんなものが遣って来たぜ。 小児二 何だい何だい。 小児三 ああ、大なものを背負って、蹌踉々々来るねえ。 小児四 影法師まで、ぶらぶらしているよ。 小児五 重いんだろうか。 小児一 何だ、引越かなあ。

「紅玉」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

画工、猛然として覚む。 魘われたるごとく四辺をわし、慌しく画の包をひらく、衣兜のマッチを探り、枯草に火を点ず。 野火、炎々。絹地に三羽の烏あらわる。 凝視。 彼処に敵あるがごとく、腕を挙げて睥睨す。 画工 俺の画を見ろ。――待て、しかし、絵か、それとも実際の奴等か。

「紅玉」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品