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黒衣聖母(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

黒檀の麻利耶観音の因縁

  • 怪奇

芥川龍之介 1920年(大正9年)5月 「文章倶楽部」

文字数
4,327字
読了目安
約9分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

黒檀の麻利耶観音を見せられた語り手が、持ち主の田代君から、その像にまつわる「福を転じて禍とする」伝承を聞く怪異小説。冒頭にキリシタンの聖母への祈りの文句を置き、像の台座に刻まれたラテン語の銘で閉じられる。

あらすじ

語り手の「私」は友人の田代君から、顔は牙彫、ほかは黒檀でできた麻利耶観音を見せられる。顔つきの無気味さに驚くと、田代君は、福を転じて禍とする縁起の悪い聖母だという伝説を語る。像はもと新潟の素封家稲見家の宗門神で、稲見が上京の折に田代君へくれたものだった。嘉永の末、稲見の母お栄が十歳のとき、弟の茂作が重い麻疹にかかり、祖母は夜、お栄を連れて土蔵へ行き、自分の命のある間は茂作を助けてほしいと麻利耶観音に祈る。翌日、茂作の熱は下がるが、祖母は眠ったまま息を引き取り、その十分ほどあと、茂作も死ぬ。田代君は台座のラテン語の銘を示し、聖母が悪意のこもった嘲笑を湛えているのを、語り手は見る。

登場人物

冒頭部(原文より)

「どうです、これは。」  田代君はこう云いながら、一体の麻利耶観音を卓子の上へ載せて見せた。

「黒衣聖母」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

「私はほんとうにあったかとも思うのです。ただ、それが稲見家の聖母のせいだったかどうかは、疑問ですが、――そう云えば、まだあなたはこの麻利耶観音の台座の銘をお読みにならなかったでしょう。御覧なさい。此処に刻んである横文字を。――DESINE FATA DEUM LECTI SPERARE PRECANDO……」  私はこの運命それ自身のような麻利耶観音へ、思わず無気味な眼を移した。聖母は黒檀の衣を纏ったまま、やはりその美しい象牙の顔に、ある悪意を帯びた嘲笑を、永久に冷然と湛えている。――

「黒衣聖母」芥川龍之介(青空文庫)

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